「里山地区におけるエネルギーの利活用」視察レポート

本記事では、2025年2月5日~6日に兵庫県宝塚市・神戸市でおこなわれた視察のレポートを掲載します。
株式会社地方創生機構ウェストバリーの井上氏、豊岡氏にご案内いただき、里山の森林資源を用いた地域エネルギー事業を足掛かりとして地域づくり全体へと事業を展開する宝塚市、神戸市での取り組みを視察しました。本視察の目的は、社会的合意プロセス、再エネの普及啓発への知見を共有することです。これにより各地域での展開、実践を後押しし、「地域エネルギードミノ」の進展を目指しています。
行程
2月5日 兵庫県宝塚市
- 宝塚里山オフィスにて薪ボイラー見学
- 西谷の森にてチッパーデモ視察
- 営農型太陽光発電見学
2月6日 兵庫県神戸市
- 神戸バイオマスラボ視察
- 「エネルギーとまちづくり」セミナー

訪問先1 宝塚里山オフィス
二重サッシの窓ガラスや暖炉など、室内の暖かさを保つための工夫が多くなされていて、エアコンに頼らず、自然エネルギーや自然採光を生かした建物利用のあり方を学ぶことができました。
午後には60kWの出力があるオーストリアETA社製の薪ボイラーを見学。スタッフの方から、薪を効率よく燃焼させる仕組みやパネルでの管理体制について説明を受けました。この薪ボイラーの熱は現在風呂を沸かすために使われていますが、今後は暖房への利用も考えているそうです。このボイラーは常に中身が見られるようになっています。一日一回、熱を使うときに薪をくべていますが、メンテナンスにはさほど手がかからないということでした。
訪問先2 西谷の森
搬出した木材を木質チップにする過程を見学しました。木質チップにするための木は山で倒し、自然の状態で枯らしてから利用しています。これは、昔ながらのやり方に近づけるためだということです。
今は一般社団法人徳島地域エネルギーの神戸バイオマスラボでの自家消費がメインですが、今後は県内の市町村を中心に広げる取り組みを行っていく予定とのこと。見学を通して、資源を地域で活用するバイオマス熱利用のポテンシャルの高さを理解しました。また、山の再生をしながら、木質チップや薪等の燃料を生み出す過程を学んだことで、森林管理の重要性を再認識することができました。
西谷の森は人工林がない広葉樹の森であり、その広葉樹から燃料をつくる全国的にも珍しい取り組みを行っています。木質チップ乾燥のための熱源を木質チップとしているため、そこでも循環が生まれていることも印象的でした。
営農型太陽光発電の見学
宝塚市民発電の営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の見学を行い、農家のご夫婦にお話しをうかがいました。農地で収穫された作物を見たり、雨風が入ってくる向きを調整できないなどの困難をお話しいただいたことで、営農型太陽光発電の実践例としてとても参考になりました。営農型太陽光発電の下で作る作物は自身の八百屋で販売しているため、訪問販売よりも身体的負担が少ないのだそうです。
神戸バイオマスラボでは、以下の2つのセミナーを聴講しました。
1.エネルギーとまちづくり
2.里山地域の活用事例
講演を通じて、地域の価値を最大にするための取り組みや、再生可能エネルギーの導入による地域循環モデルについて学びを深めました。
どの地域にどんなポテンシャルがあるか、そこにはどのような人たちがいるか、誰をリーダーに据えるか、どう収支をあげていくかなど、様々なステークホルダーや地域の特性を考えながら事業を展開していくことの重要性やその実践例を知ることができました。
バイオマス事業においては、里山を保全する主体、資源の運搬や機器の設置作業など、少しずつ資金を落としながら多くの主体が関わり合える仕組みが特に考えるべき点であるということです。様々な主体を巻き込みながら地域の価値を上げていく、他の地域でも応用可能な手法についても学びました。
セミナー聴講後には、神戸バイオマスラボ内のバイオマスボイラーを見学。ボイラーでは熱交換器による熱交換を行っており、常時70℃程度のお湯に交換されています。熱交換によってつくられたお湯は、施設内の岩盤浴用サウナや風呂、飲み水に利用されます。また、タンク内・ボイラー内の水温は、パネル表示によって常に監視が可能です。
このボイラーは、事業者から持ち込まれた燃料のエネルギー効率を確かめるための実験施設としても利用されているそうです。
バイオマスボイラーの仕組みから利用のあり方、バイオマス事業を地域で失敗させないための仕組みの実践例まで、包括的に学ぶことができ、とても有意義な視察となりました。
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