本記事では、2024年2月29日(木)に福島県二本松市でおこなわれた課題解決型実地研修に参加したインターン生のレポートを掲載します。


レポート1

ISEPインターン 岩本早紀

日時・会場

ワークショップは2024年2月29日、福島県二本松市の笹屋営農型発電農場で開催されました。ワークショップは全行程が屋外で行われたため、寒さもまたひとつの経験となりました。参加者は最高気温12℃・最低気温4℃の東京から、最高気温10℃・最低気温-3℃の福島までやってきたのです。

背景

持続可能なライフスタイルへの移行が進む中、「コミュニティ・パワー」と呼ばれる、地域が主体となって積極的にエネルギー事業に参画するコンセプトが存在感を増しています。ソーラーパネルや風車の設置など、化石燃料や原子力に代わるグリーンエネルギーの大量生産を目指すさまざまな取り組みが含まれます。
今回のワークショップで訪れた場所は、代表的な日本のコミュニティ・パワーといえます。まず社長の近藤氏から簡単な紹介プレゼンテーションがありました。この発電設備は二本松営農ソーラー株式会社によって導入されたもので、敷地内の作物や農作業は株式会社サンシャインが行っており、栽培されている様々な種類のブドウは社員たちの努力のたまものです。このプロジェクトは、二本松ご当地エネルギーをみんなで考える株式会社(ゴチカン)、みやぎ生協、環境エネルギー政策研究所(ISEP)の共同出資により実現しました。

ワークショップの目的

二本松市のケースのように、現在日本では複数のコミュニティパワープロジェクトが進行中ですが、全国に普及するまでには至っていません。本ワークショップでは参加者にコミュニティパワープロジェクトについて全面的に理解を深めてもらうことを目的とし、双方向のディスカッションを通じて、関連する課題や利点への気づきが得られました。実際に事業を成功させている営農型太陽光発電所の運営者から経験談をじかに聞くことに加え、協力的な雰囲気のもと参加者が多様な視点や経験を共有し、集合知を形成してゆきました。理論的なディスカッションと実践的な経験談の両方を通じて、持続可能な未来を実現するために必要な知識を得ることができました。

ワークショップの流れ

  • 12:10   二本松駅に到着、タクシーで笹屋営農型発電農場へ移動
  • 12:30  農場内のワーケーションスペースにて社長による基本情報プレゼンテーション
  • 13:00  農場内を移動しながら、作物や太陽光発電設備の視察
  • 14:00  ワーケーションスペースに戻り、各自の宿題シートに沿ってプレゼンテーション
  • 15:00  考えを共有しながらディスカッション
  • 15:50  終了

学んだこと

農園の説明と見学の中で、私が最も興味を持ったのは以下の4点です。

1. ソーラーパネルの種類

農場内では様々な種類のソーラーパネルについて知ることができました。ソーラーパネルの技術が急速に進歩していることがわかり、おもしろかったです。

  • 可動式ソーラーパネル(手動+自動): ソーラーパネルが動くことで、日射を受ける角度を調整し、発電量を最大化することができる。
  • 両面ソーラーパネル: 両面パネルには多くの利点があるが、特に目立ったのはその効率と特定の環境下での性能の向上である。農場にも両面パネルが設置されており、パネル両面から太陽光を取り込むことで、直射日光と反射光の両方から発電することができる。個人的には、この両面パネルは、雪や氷が太陽の光を反射する率が高く、パネルの裏側への反射が多い環境でも効果を発揮しそうだ。
  • ソーラーカーポート: 農場内にも建設中。発電すると同時に、駐車している車に日陰を提供できる利点もあります。

個人的に驚いたのは、営農型太陽光発電(太陽エネルギー生産と農業活動のために同じ土地を利用すること)が農作物にもたらすメリットです。多くの場合、土地に太陽光発電を設置するというと野立て型を想像しがちで、日照が制限され、植物や作物の生育を妨げると考えられています。しかし現在、こうした問題を回避できるさまざまな種類の太陽光発電システムが利用可能であることを考慮することが重要です。なかでも農業用太陽光発電は、エネルギー生産と作物収穫の両方を最大化し長期的に社会に大きな利益をもたらすことができる解決策として、野立て型パネルの代替となりえます。また、太陽光を部分的に遮ることで強すぎる日差しを和らげ、土壌からの水分蒸発が減少する点においても有用です。農業用太陽光発電システムは、気候変動に伴う周辺環境の極端な温度変化への対応策にもなります。温度調節の役割も果たすため、農作物への熱ストレスを減らし、寒い季節には霜から守ってくれます。これは近年の気候を考慮するととても重要なことです。

2. ソーラーパネルの支柱の利用

農業用太陽光発電のパネルを支える支柱は、ブドウの木の成長に役立っています。支柱と支柱のあいだに針金を渡し、枝を巻き付けブドウ棚を形成しているのです。営農型太陽光発電は作物の成長を妨げると考える人もいますが、農家の知識を活用することでソーラーパネルの設置が作物の成長を妨げるのではなく、むしろ役立つのです。農業のノウハウが発揮されることで、太陽光発電と作物栽培の両方が調和し繁栄する環境を作り出せるのです。

3. 電力(売電)メーター

FIT制度のもとでの再生可能エネルギー技術導入が個人/企業/コミュニティにもたらすインセンティブは知っていたものの、このシステムを円滑に運用するための機器を見るのは初めてでした。農場で発電された電力量を計測するための電力計など、さまざまな機器を見ることができました。こうした機器を通じて、全体の発電量を計測しFIT制度の対象となる売電金額を計算するための正確なデータが会社に提供されています。

4. 麦踏み

今回の視察内容と直接関係はないものの、大麦の新芽を踏むという習慣を初めて知りました。新芽を踏むことで、茎を大地にしっかりと根付かせ、強くたくましい作物に育てるのだそうです。

ワークショップの内容

農園見学の後、参加者たちは各自が用意したアイデアをもとにコミュニティパワーのコンセプトについてプレゼンテーションを行いました。その内容は営農型太陽光発電から教育における革新的なアプローチまで、各自の関心や経歴、学歴を反映した多様な分野に及びました。発表と議論を通じていくつかのパターンが浮かび上がり、「中学校が地域社会のエネルギー転換の拠点となるためには何が必要か?」というワークショップの中心テーマが導き出されました。 若い世代がコミュニティとサステナビリティの架け橋として果たす役割に焦点をあてています。
つぎに、持続可能性の問題をより深く掘り下げるため、根本的な原因について各課題の関連性を意識しながらブレインストーミングを行い、効果的な変化をもたらすための極めて重要なレバレッジ・ポイントがあぶりだされました。参加者は再度ブレインストーミングを行い、このポイントに対する創造的な解決策を出し合いました。その後、出された解決策の中からひとりひとつずつ選び、具体的なプロジェクトのアイデアを考え発表しました。
ワークショップを通じて、地域社会のエネルギー転換という多面的な課題を包括的にとらえ検討することができました。これは実用的な解決策を通じて持続可能な開発に有意義な貢献をするというワークショップの目的を強調するものです。

私が果たした役割

私がワークショップで発表したアイデアは、ニュージーランドのクライストチャーチにマイクログリッドを設置し、地震を含む様々な原因により停電が起きる問題に対処するというものでした。地域住民全員が平等に資源を利用できるようにし、マイクログリッド設置のアフタープランを確立することで、地域のエネルギー自給率を高めることを目指したものです。さらに、ニュージーランドでは電気代が高騰しているため、自給することで外的資源への依存を減らし、個人の負担を減らすことができると考えました。しかし、自分のアイデアを発表する中で、この分野の知識が不足していることに気づき、もっと本を読んで勉強する必要性を痛感しました。

「中学校が地域のエネルギー転換の拠点となるには何が必要か」という問いについて、私が提案したプロジェクトは、学校での政治教育プログラムの実施です。個人の価値観を形成する重要な要素である政治の話題は、タブー視されたり、議論が避けられているように見受けられます。私は、(特に学校において)自分の考えを話すための安全な空間を作ることが重要で、それによって学校の外でも家族や友人と気軽に話すことができると思っています。この考えと、政治教育プログラムに関する私の個人的な経験に基づき、日本の中学校でも政治教育プログラムを実施することを提案しました。プログラムを実施すれば、日本の若者が政治に関心を持ち、重要性を理解するようになり、地域社会の持続可能な将来像を含め自分たちの価値観に沿った政党を支持し、投票するようになる可能性が高まるでしょう。

結論

営農型太陽光発電は、明らかに再生可能エネルギーへの移行における重要な道筋の一部であり、農業者の知識とあわさることで農業生産性とクリーンなエネルギーの生産を両立させる能力を備えています。このワークショップで、持続可能性の追求には多くの課題が内在していることが浮き彫りになり、1つのトピックでも根底には多くの原因があり、それぞれに集中的かつ協力的な取り組みが必要であることがわかりました。

ワークショップ中に提示されたアイデアの多様性からは、協調的な問題解決の重要性を学びました。参加者それぞれの信念、教育、生い立ちが形成した個人の視点が、持続可能性という多面的な課題に対してそれぞれユニークな見方を提供しており、持続可能な社会は1人では達成できないもので、個人、地域社会、企業など、様々な立場の人々の協力が必要であることを再認識させられました。持続可能性は複雑な問題であり、環境、経済、社会のニーズが調和した未来を実現するためには、協力し合い、責任を分かち合う文化の醸成が不可欠なのは明らかです。

提言

私は日本語が流暢ではありませんが、営農型太陽光発電の利点やエネルギー転換の解決策を見出すための議論に関して貴重な気づきを得ることができました。理解ある人々に囲まれ、トピックに関する知識不足や言葉の壁にもかかわらず、快適な環境のもとでワークショップに参加でき、とても充実した経験でした。

再生可能エネルギーに向けた動きをより力強いものにするためには、すでにこのテーマに関心を持っている人以外にも対象を広げることを提言します。ワークショップを一般市民にも親しみやすい内容と双方向型の活動にカスタマイズすることで、地域社会の認知と参加につながると思います。さらに、ワークショップをより充実させるために、開始時間を早めることも考えられます。参加者の興味関心や学びは多岐にわたることから、アイデアを共有する時間を確保することで、ワークショップは有意義なものになり、参加者同士の協力や振り返りを促進するでしょう。互いの視点を共有することができ、全体的な学習効果を高め、集合的な理解の感覚を養うことにつながると思います。

※本レポートは、英語で作成されたものを翻訳し掲載しています。

レポート2

ISEPインターン 本荘潤一郎