全国ご当地エネルギー協会リレーエッセイ17
一般社団法人ふくしま市民発電 理事長 新妻香織氏
2011年3月11日の東日本大震災で、私の故郷は壊滅した。同級生や隣人らはすべてを失い、私の実家も流れた。「千年に1度の大津波だってよ。冥土の土産だねぇ…」まだ私たちには冗談を言い合うくらいの余裕があった。しかし3月12日、14日、15日と次々爆破した原発事故で、私たちから完全に笑いが失せた。
私たちは次世代に対し取り返しのつかないことをしてしまった!
大学時代からアンチ原発を標榜し、原発に頼らない暮らしを目指そうと、13年前から私は自宅の屋根に太陽光パネルを載せていた。佐藤栄佐久知事と共にプルサーマル導入の際は戦った……。後悔と苦渋が胸を塞いだ。
しかし絶望しているわけにはいかない。この社会を選択した責任が私たち世代にはある。1ミリでも良い相馬市を次世代に手渡さなければ、申し訳が立たないと被災者支援に走った。その一環として、まちづくりのためのセミナーを2011年7月から毎月開始した。そしてエネルギー問題をテーマにした際、講師に招いたのが飯田哲也さん(環境エネルギー政策研究所所長)だった。
講演が終わってすぐ、会場に来てくれていた友人宅に押しかけ「コミュニティ発電を相馬市でも始めよう!」と持ちかけた。
「ふくしま市民発電」のチラシを作り、募金集めからスタートした。母校日本女子大学で講演をした際、先輩3名が作るグループAASAが協力を申し出てくれた。それからというもの、相馬市の事務局と東京支部が二人三脚で活動を展開することになった。
取り組みとしては、発電事業(70kWというかわいらしいソーラー発電)、政策提言(小水力、バイオマスなど)、省エネ(エコ教室他)などを行っている。ソーラーパネルは4カ所の屋根に設置した。見学会には、日本女子大学の学生や同窓生らが東京からバスを仕立てて訪れてくれた。
ふくしま市民発電のこれからの展開としては、太陽光パネルを増設しながら、上水施設でのマイクロ水力とバイオマス発電に希望を感じている。地域で使うエネルギーの購入代金は地域の総生産の10%といわれている。それが域外に出てしまうことで、雇用も流出してしまう。分散型の小規模発電を各地で行い、エネルギーを地域で使っていくことで、お金も雇用も生きがいも地域の中で循環を始めるだろう。
福島は県土の70%を占める森が放射線の高いエリアになっている。バイオマスにより、エネルギーを作るだけではなく、森林除染、森林再生、雇用創出が何十年にもわたって各地で展開できると思うし、林道整備で観光開発にもつなげられないものかと夢想する日々だ。
『新エネルギー新聞』第21号(2015年3月9日)掲載