全国に続々と誕生しているご当地電力のネットワーク組織「全国ご当地エネギー協会」が正式に発足しました。これからここに集った40近い団体が、2016年に予定されている電力の小売り自由化も見据えつつ、地域主導で自然エネルギーを広めるためにより強く連携していくことになります。これにより、これまで地域ごとに活動してきたそれぞれのエネルギー事業は、新しい局面を迎えることになります。今回は、5月23日に行われた設立総会の様子を報告いたします。(取材・記事:高橋真樹)

全国ご当地エネルギー協会設立総会(写真:高橋真樹)
全国ご当地エネルギー協会設立総会(写真:高橋真樹)

広範なネットワークのもと、自然エネルギー拡大をめざす

「全国ご当地エネルギー協会」は、以前このサイトでもお伝えした「コミュニティパワー国際会議 2014 in 福島」で採択した「福島コミュニティパワー宣言」(※)に基づいて設立されました。福島原発では人類の歴史に残る大惨事が起こり、地元の人々は今も苦しみを味わっています。そんな中、世界各地で爆発的に伸びている自然エネルギーを活用して、地域から社会を変えていく取り組み同士を結びつけようという試みが動き出したことになります。

団体発足に集った正会員と準会員は、北海道から九州まで35団体。いわゆる、ご当地電力と呼ばれる地域に根ざしたエネルギー事業をすすめる事業者から、生協など食の生産者や消費者と結びついた全国組織も名を連ねました。他にも「エネ経会議」や「市民電力連絡会」など8団体が協力ネットワーク・団体として参加しています。事務総長にはISEP(環境エネルギー政策研究所)の飯田哲也さんが就任しています。

協会設立の目的は、地域に根ざした自然エネルギーの開発を通じて、持続可能な地域社会を築いていくこと。そして、その実現のために情報の共有や共通の課題に協力して取り組んでいくこととしています。活動内容は、地域での自然エネルギー事業を進めやすくするような情報共有、政策研究と提言、人材育成、広報普及、ネットワーキングなど多岐にわたります。いずれも、具体的な日程についてはこれから検討していく予定になっています。(2014年6月3日現在)

現在実現をめざしているユニークなアイデアのひとつは、「ご当地エネルギー証明書」の発行です。アメリカとヨーロッパでは「発電源証明書」という仕組みが広く使われています。これは、自分が使っている電気がどこから来たものかを証明できるシステムです。それと同じように原産地を証明できる仕組みのものを、ご当地エネルギー協会が今年中に制度化していこうと考えています。

例えば宝塚のご当地電力で発電した電気を、新電力に売って宝塚市役所が買うというときに、上乗せして費用を支払えば証書という形で宝塚の自然エネルギーを使ったという証明ができることになります。この仕組みを活かせば、生協などを通じて、個別の消費者にも届くようにすることもできるでしょう。

他にも、年度内に自然エネルギーをテーマにした地域ワークショップを3回実施する予定で、11月に熊本の阿蘇で行うことが決まっています。

※ 福島コミュニティパワー宣言について
「コミュニティパワー国際会議 2014 in 福島」で採択された、持続可能な社会を求める宣言(2014年2月2日採択)。宣言では「このネットワークを活かして『21世紀の電事連』を立ち上げる」「福島からの変革を支援するための『福島コミュニティパワー基金』を立ち上げる」「いま、ここから歴史を変える」といった文言が謳われている。宣言の詳細はこちら

ご当地エネルギー協会への期待

ご当地エネルギー協会の発足に際し、会場にいる識者の方たちからは次のような期待の声が寄せられました。

古賀茂明さん
古賀茂明さん(元経済産業省)

「国のエネルギーシステムを変えていくためには、政策提言が重要です。特ににここに集まったみなさんは、現場で事業をされていて、国のシステムのここが問題だとか、ここを変えて欲しいということが良くわかっている。だからこそ具体的に変えていくための提言をして欲しいと期待しています。」

伊藤宏一さん(千葉商科大学)
伊藤宏一さん(千葉商科大学)

「去年の夏、ホワイトハウスの屋根に太陽光パネルが設置されました。また、米軍は燃料の25%を自然エネルギーに代えるという動きを進めています。こういう動きは日本ではほとんど伝わっていませんが、効率を考えたら当たり前の動きだと思います。日本でも国会議事堂や首相官邸にパネルを設置するとか、そのような動きにつながっていってもおかしくありません。この協会には、そうした突っ込んだ情報を提供していくという役割も期待しています。」

上原公子さん(脱原発をめざす首長会議)
上原公子さん(脱原発をめざす首長会議)

「大阪では中国の会社がメガソーラーを建設する計画が出ていますが、それでは利益を外国に持っていかれてしまいます。だからこそ『ご当地』にこだわることが大切なのです。地域の人たちが、自分たちの地域をどうしていくかを考え、行動していく。そのときに、土地利用については行政に条例をつくってもらうなど、協力していくこともあるでしょう。このご当地エネルギーの動きは、新しい時代を切り開いていく力になると考えています。」

記者会見終了後は、正会員の「大地を守る会」が運営する農園カフェ&バル「Daichi & keats」で、各地のご当地電力のメンバーが持ち寄った食材がふるまわれました。会津電力からは社長を務める佐藤彌右衛門さんの名を冠した大和川酒造の大吟醸「弥右衛門」など、数種類のお酒。他にも秋田のイチジクの甘露煮、小田原の鈴廣かまぼこや徳島のすだち、山口のイワシ、岡山の焼きアナゴなど数々のご当地名産に、参加した一同のテンションも上がりっぱなし。

農園カフェ&バル「Daichi & keats」での懇親会
農園カフェ&バル「Daichi & keats」での懇親会(写真:高橋真樹)

このような交流の場を通じて、志を持った全国の人々が集うということは、エネルギーだけでなく、こうした豊かな地域地域の食や文化も供にわかちあい、それを守り育てていくことなのだと改めて感じさせられます。全国ご当地エネルギー協会としてどのような展開を進めるか、今後の具体的な活動に注目していきたいと思います。

ご当地エネルギー協会のホームページは、旧コミュニティパワー・イニシアチブのホームページを引き継ぐ形で運営されています。

(取材・記事:高橋真樹)

全国ご当地電力レポート