国民的議論なきエネルギー政策の撤回を求める緊急声明
岸田政権は原発推進ではなく地産地消の再エネ100%を目指せ
2022年9月1日
一般社団法人 全国ご当地エネルギー協会
代表理事 豊岡和美
代表理事 鈴木亨
理事 一同
私たち全国ご当地エネルギー協会は、2011年3月11日の東日本大震災で引き起こされた東京電力福島第一原発事故を深刻に受け止め、エネルギーを自分ごととして地産地消による地域自立を目指して活動してきました。
今回の岸田文雄総理の突然の原発推進姿勢への転換に抗議します。
火事場泥棒的な政策転換は止め、原発再稼働せずに速やかに廃止せよ
ロシアによるウクライナ侵攻とエネルギー危機、そして国内の電力不足騒ぎなどに乗じて、安易な原発再稼働、運転期間延長や次世代革新炉の開発・建設などを打ち出した岸田政権の方針は、フクシマの教訓を無視した暴挙であり直ちに撤回すべきである。
ウクライナでは、ロシアに占拠されたザボリージャ原発が砲撃・断線などで、日本が福島原発事故で経験したメルトダウンの恐れに世界が震撼として注視しているなか、原発人災事故当事者の日本が事故の総括無く原発再稼働や新増設に前のめりになる姿勢は、「欺瞞」というほかない。
現実を直視すれば、原発に固執する合理的な理由は見当たらない。むしろ地震や津波、テロ対策への原発安全性は不充分であり、住民避難も現実的ではなく、核廃棄物の行方すら見通しの立たない原発は、再稼働せずに速やかに廃止すべきである。
原発は電力不足には役立たない
そもそも、原発は日本の電力不足には役立たない。電力不足は電力最大需要(ピーク)時の需給の過不足の問題であり、ベースロードの原発を再稼働しても役立たない。1年間のうち0.5%・約50時間の需要ピークを下げるかシフトするだけで、約10%(東京電力管内で約500万kW)も最大需要は下がる。これに最も有効なのは、節電と蓄電池であり、国はすでに導入を始めている需要側応答(デマンド・リスポンス)や需要側の蓄電池の拡大を急ぐべきである。
原発は気候変動対策にも役立たない
気候変動対策は、中長期的、そして恒久的な対策が求められており、省エネと同時に、再生可能エネルギーへの転換が王道である。日本の原発はすでに相当に老朽化しており、安全性を担保出来ず、今後は大量廃炉時代に直面する。一方で、原発の新増設をしようにも、欧米などの現実を見ても明らかなとおり、高コスト化と建設期間の遅延に次ぐ遅延で、ほとんど当てにならない。
さらに、原発自体が気候変動に対して脆弱である。高温化・暴風雨・洪水の瓦礫などで、現在のフランスで起きているように、予期しない長期間の停止を余儀なくされる。
小型原発や革新炉は始める前に終わっている
国内外が小型原発(SMR)や次世代革新炉に注目しているが「根拠のない熱狂」である。一応実用化されている既存の大型原発さえ、英・仏・フィンランドなどで高コストと建設遅延で苦しんでいるのに対して、数十も炉型のあるSMRや次世代炉は、はるかに高いコストからの出発点となる。炉型もバラバラで需要もほとんどないため、量産効果によるコストダウンは望めない。原発に不可分の核のゴミも発生する。SMR は一箇所に大量立地が想定されているため、福島第一原発のような連鎖メルトダウンの恐れもありうる。
すなわち、小型原発は明らかに無駄な開発投資であり、即刻中止すべきである。
「再エネ100%が可能」が世界の科学者のコンセンサス
本年7月に、2050年までに世界全体を再生可能エネルギー100%とすることが経済合理的に可能であるという科学者によるコンセンサスが報告されている(註)。人類にとって、無尽蔵かつ膨大にある太陽エネルギーで、温室効果ガスも放射能も出さない、地産地消も国産も可能であるならば、もはや原発など新規開発はおろか既存の原発再稼働も無用である。
地産地消・地域主導型の再エネこそが311後の「国民の声」
福島を中心に、未だに何万人もの方々が故郷を追われ、原発事故処理や汚染土の処理などもまったくメドが立たず、福島第一原発事故はまったく終わっていない。エネルギーを国や事業者に任せてきた結果、この世界史的な事故を起こさせてしまった反省に立ち、地域の自立や気候危機への対応としても、地産地消・地域主導型の再エネに自ら取り組むことこそが3.11後の私たち国民の責務であると考える。
国は、全力をあげて地産地消・地域主導型を中心とする再生可能エネルギー100%を目指すべきである。
註
- フィンランド LUT大学プレスリリース 2022年8月9日「Researchers agree: The world can reach a 100% renewable energy system by or before 2050(世界は2050年までに100%再生可能エネルギーシステムに到達することができることに世界の科学者は同意した)」
- ※元論文 Christian Breyer 教授ほか 15機関・23名の研究者「On the History and Future of 100% Renewable Energy Systems Research(再生可能エネルギー100%研究の歴史と未来)」 2022年7月25日