当協会は、「再生可能エネルギー導入促進関連制度改革小委員会報告書(案)」について、下記の通り談話を発表いたします。


「再生可能エネルギー導入促進関連制度改革小委員会報告書(案)」に対する意見(暫定)

入札制度ではなくFIT改良で「コスト効率化」を目指せ 〜入札制度は「NFFOの亡霊」〜

2016年1月15日
一般社団法人全国ご当地エネルギー協会
代表幹事 佐藤彌右衛門

全国ご当地エネルギー協会は、改革の方向性全般には賛同しますが(後日全般にわたる意見書を公表予定)、「入札制度」の導入に反対します。その主な理由は、以下のとおり。

1. ご当地エネルギー事業者や地域事業者が排除される

先に行われたドイツの入札でも明らかなように、入札制度では少数の大規模事業者がほぼすべてを落札し、地域の事業者、協同組合など小規模な事業者などは締め出される。改革案では「地域密着型に配慮して小規模は配慮」としているが、規模の大小が問題なのではない。地域密着型でも大規模を目指すこともあるが、開発投資体力の有無・大小で入札から閉め出されることになる。

2. 歴史的にむしろマイナス面が大きい

入札制度は英国で1990年から導入された「非化石燃料導入義務」(NFFO)など歴史的な経験では必ずしも良い結果を生んでいない。それらは例えば以下。

(1) 必ずしもコスト効率化に繋がらず逆に無駄なコスト上昇(リスクプレミアム等)の経験(参考図1)
(2) 落札したものが必ずしも建設されない(NFFOでは30%ほど)
(3) FITに比べて複雑な制度設計となり、行政の非効率化や不正の余地が生まれる
(4) 長期的な市場見通しを不透明にするため再エネ産業を育まない(例:英国のウィンブルドン現象)
(5) 地域主導・小規模事業者を排除し、社会イノベーションの機会を減少させる

3. 明確に表れている「コスト効率化」の成果を活かすべき

改革小委自ら示しているとおり(10/20資料1 p.11、参考図2)、日本の太陽光発電は海外に比べて高コストだが、FIT導入以後着実に下がっている。これはFITの成果と見て良い。この成果を活かすかたちで、たとえば一定比率で毎年もしくはより短期間で買取価格を下げるなど「コスト効率化」を目指すことの方が明らかに確実である。

4. 固定価格買取制度の本質を歪める

固定価格買取制度(FIT)は、誰もがエネルギーを生み出す権利を具現化したものである。これに対して入札制度はトップダウンの大規模産業文化によるものであり、地域コミュニティとは政治文化的に相容れない。固定価格買取制度(FIT)によって、全国で800もの「ご当地エネルギー」が誕生している。「コスト効率化」も重要だが、それ固定価格買取制度(FIT)の枠内で目指すべきである。

 

参考図1. EUにおける各国の再生可能エネルギー支援政策の比較(FITとクォータ・入札制度との対比)
(出典:EC“The support of electricity from renewable energy sources”, COM(2005) 627 final, Dec.2005)

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参考図2. 再生可能エネルギー導入促進関連制度改革小委員会(10/20資料より)

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