全国ご当地エネルギー協会リレーエッセイ18
多摩電力合同会社 副代表 山川勇一郎氏
東京郊外の多摩丘陵、高度経済成長期に作られた集合住宅が立ち並ぶ多摩地域で、私たちは市民発電所を作っています。
3.11を機に「原発に頼らないエネルギーを自分たちの手でつくろう!」と市民の有志が集まり、2012年5月、一般社団法人多摩循環型エネルギー協会を設立。同年、環境省の「地域主導型再生可能エネルギー事業化検討業務」のモデル地域に指定され、同10月に「多摩電力合同会社」を設立しました。
広い土地が少ない都市郊外において、公共施設や民間・集合住宅の屋根を活用し、家主には負担ゼロで賃料収入と非常時の電源も使える「屋根借り太陽光発電」の事業化に、全国に先駆けて取り組んできました。
また、「志民(市民)の志金(資金)で発電所をつくろう!」をコンセプトに、トランスバリュー信託株式会社と連携して信託型市民ファンド「たまでん債」を組成し、2期・合計3830万円を資金調達しました。
2015年3月現在、私たちが設置した市民発電所は12カ所500kWを超え、更に今春に青梅市にも市民発電所が誕生する予定です。
エネルギーシフトは息の長い仕事ですから、私たちは発電事業を行うと共に、次世代の若者を育てる活動にも取り組んでいます。多摩エネ協が2013年に立ち上げた「次世代リーダー育成プログラム」は、大学生・大学院たちを対象に、彼らが多摩地域での環境・エネルギーアクションを企画・実行することを通じて環境・エネルギー問題について学ぶ年間プログラムです。2年間で12大学・16人の大学生・大学院生がプログラムを修了、11のプロジェクトが新たに立ち上がりました。
このように多摩エネ協・たまでんは、団塊世代中心の創業期を経て、世代を超えて活動が広がってきています。
そして今、活動は第2フェーズを迎えようとしています。これから訪れる電力業界の再編を見据え、グループの組織改編を急ピッチで進めています。2015年4月、たまでんは既存の市民発電所の管理・運営に特化、それと同時に、蓄電池の活用やエネルギーマネジメント、これらのプラットフォームの提供等、地域のエネルギーサービスを担う会社「たまエンパワー株式会社」を新たに設立します。
遠くない将来、日本各地に自立したエネルギー地域が生まれることを夢見て、これからも地域主体のエネルギーシフトを後押し(=エンパワー)していきます。
『新エネルギー新聞』第22号(2015年3月23日)掲載