環境エネルギー政策研究所(ISEP)インターンが、全国ご当地エネルギー協会会員団体にインタビューをおこなうご当地インタビュープロジェクト。第3回の第2弾は、しずおか未来エネルギーで働く村瀬洸生さんにオンラインでお話をうかがいました。


ご当地インタビュープロジェクトについて

ISEPのインターンが、全国ご当地エネルギー協会会員団体にインタビューをおこない、必ずしも一般的には知られていないご当地エネルギーの魅力を伝えるプロジェクトです。

この記事は、小出愛菜(全国ご当地エネルギー協会事務局)、大仁田千晶(ISEPインターン)、亀山晋平(ISEPインターン)、嶋田姫由(ISEPインターン)、植野翔斗(ISEPインターン)が作成しました。

#3-2 しずおか未来エネルギー株式会社


今回インタビューしたのは…

村瀬 洸生(むらせ こうせい)さん

長崎県出身。静岡大学卒業後、一般社団法人静岡県環境資源協会、特定非営利活動法人アースライフネットワーク(静岡県地球温暖化防止活動推進センター指定団体)を経て、しずおか未来エネルギー株式会社(現職)。

主な実施業務

  • 低圧太陽光発電所のO&M
  • 小水力発電事業可能性調査業務
  • 温室効果ガス排出量の算定業務
  • 再生可能エネルギーを活用した環境教育
  • 二児の育児

しずおか未来エネルギーでの仕事について

嶋田姫由
嶋田姫由
現在、村瀬さんはしずおか未来エネルギーでどのような業務を担当しているのでしょうか?

 

しずおか未来エネルギーは従業員が私だけですので、総務であったり太陽光発電の管理であったり、業務全般を担当しています。

 

現在、注力していることは、静岡市内の河川における小規模な水力発電に関することですね。長年、適地を探していて、ようやく1ヵ所見つかったので、最後の詳細設計に向けて調査をおこなっているところです。

村瀬洸生
村瀬洸生
水力発電調査での一コマ(写真:しずおか未来エネルギー)
嶋田姫由
嶋田姫由
環境教育活動に注力されていると服部さんのインタビューで伺ったのですがが、そこにもかかわられているのでしょうか?

 

そうですね。再生可能エネルギーの普及啓発はもちろんやっていますが、やはり地域の人材育成もしっかりやっていきたいと思っています。現在、静岡県の温暖化防止活動推進センターと一緒の場所に事務所を構えていることもあり、環境教育をしてほしいとの声が県内各地から幅広く寄せられます。その中でも、エネルギーに関する環境教育であれば、代表の服部や私が赴いて、小中学生向けの講座や体験教室を実施しています。

 

あとは、今はコロナであまりできていないんですが、環境系イベントの出展依頼も来ますので、そこで再エネの普及啓発ブースを設けて、再エネの普及状況を示すパネルの展示や、太陽光パネルで発電した電気で家電等を動かすなど、楽しみながら県内における再エネの状況について知ってもらおうと取り組んでいます。

村瀬洸生
村瀬洸生
環境教育の様子(写真:しずおか未来エネルギー)
大仁田千晶
大仁田千晶
今までしずおか未来エネルギーで働いてきた中で、どんな仕事が大変で、どんな仕事が楽しいですか?

 

資料をつくるなどといったデスクワークが少し大変だなって思います(笑)だけど、大変だなって思うことでも、何かしら自分のためになると前向きに考えて取り組むようにしています。

 

一方で楽しい仕事は、今取り組んでいる小水力発電に関することですね。小水力発電については、自分で全国の研修会とかに参加させてもらって、ゼロから知識を蓄えた後に静岡県内で適地を探し、現在では実際に建設に向けて進めそうという状況です。自分で筋道を作って、発電所の建設に向けて動けているのが非常に楽しいです。

村瀬洸生
村瀬洸生

 

大仁田千晶
大仁田千晶
新しい発電所をつくることは楽しくもあり難しい部分も多くあると思いますが、関係者の方々との調整は大変ですか?

 

大変ですね。まだ完成していないので、これからの部分も多くありますが。太陽光発電所は変な話、土地さえ確保できてしまえば、あとは設計図作って完成というような感じで、制度に関しても経済産業省に申請するぐらいなんです。

 

だけど、現在、私がやっている水力発電所は、法令関係が非常に大変でですね、水を扱うということで争いの種になりやすいので、色んなところで許認可が必要になってくるんです。なので、今、いろいろと調整をしているところです。

 

また、水力発電は川の水を取って、一般の方が持っている土地に水を通す管を通さなければならないので、その土地の所有者に直接、話をしに行く必要があります。所有者の中には、再エネに理解がある方もいれば、ない方もいるので、その都度、持っていく資料や話の内容を工夫しなければいけない点が非常に大変でした。

村瀬洸生
村瀬洸生

省エネだけでなくエネルギーをつくる側になるまで

嶋田姫由
嶋田姫由
村瀬さんはしずおか未来エネルギーに新卒で入社されたのでしょうか?

 

新卒ではないです。前職は静岡県の温暖化防止活動推進センターの職員をしていました。私が前職に就いた1年後ぐらいにしずおか未来エネルギーが立ち上がって、最初は服部さんと役員だけの組織でした。太陽光発電所が増えてきて管理面などでマンパワーが必要だなということで、温暖化防止活動推進センターからしずおか未来エネルギーに移りました。
村瀬洸生
村瀬洸生

 

嶋田姫由
嶋田姫由
村瀬さんがしずおか未来エネルギーに入った経緯についてもう少し詳しく教えて下さい。

 

もともと、しずおか未来エネルギーが立ち上がった時は、服部さんがメインで業務をやっていて、温暖化防止活動推進センターの職員がサポートとして業務を行っていました。実際、私も温暖化防止活動推進センターの職員でしたが、しずおか未来エネルギーの立ち上げに関わっていたので、新しいスタッフを採ることになった際に、服部さんからしずおか未来エネルギーに移らないかと打診がありました。

 

私は温暖化防止活動推進センターの職員時代に、自治体の温室効果ガス排出量算定業務をやっていたので、その経験を活かして、再生可能エネルギーを導入したらどれくらい温室効果ガスの排出が減るかといった算出を温暖化防止活動推進センターと協力しておこなっています。もし、職員公募をしてたら、私以外の誰かが入っていたかもしれませんね(笑)

村瀬洸生
村瀬洸生
しずおか未来エネルギー代表取締役 服部乃利子さん(写真:しずおか未来エネルギー)
大仁田千晶
大仁田千晶
村瀬さんが再生可能エネルギーに興味を持ったきっかけについて教えて下さい。

 

もともと静岡大学の農業系の学部から大学院まで進んで、森林について勉強していました。その後、静岡県の環境資源協会に新卒で1年ほど務めており、そこで事業所向けの環境啓発活動をしていました。ですが、事業所向けよりも家庭向けの方がやりたいなと思いまして、家庭向けに環境啓発活動を行っている温暖化防止活動推進センターの方に移りました。

 

その時までは、まだ再エネに興味があるという訳ではなかったんですけど、やっぱり省エネに取り組んでいく中で、今使っているエネルギーの量を減らすだけじゃ限界があるなと感じました。エネルギーをつくる方にもっと目を向けて、参加しなければいけないというところから、再エネに興味を持ちはじめました。

村瀬洸生
村瀬洸生

社員一人の会社だからこその魅力

嶋田姫由
嶋田姫由
しずおか未来エネルギーで働く魅力を教え下さい。

 

個人的にはやはり、地域で活動できることだと思います。都市圏で働くことも魅力的ではあるんですが、しずおか未来エネルギーでは地域のみなさんと直接、会話をして地域のために何かできる、そして地域の子どもたちにもかかわっていくことができます。地域で活動できる点がしずおか未来エネルギーの魅力だと思っています。
村瀬洸生
村瀬洸生

 

嶋田姫由
嶋田姫由
大手企業だと地域に寄り添うことがなかなか難しい部分が、しずおか未来エネルギーであれば、地域に直接アプローチできるということでしょうか。

 

そうですね。大きな会社ですとどうしても会社の内と外の両方を意識する必要があると思います。幸いにも、しずおか未来エネルギーは服部と私だけですので、意識を外に向けて、注力していけばいいという側面があります。そういった点では、非常にやりやすいですし、魅力のひとつなのかなと思います。
村瀬洸生
村瀬洸生

 

大仁田千晶
大仁田千晶
村瀬さんはしずおか未来エネルギーに入る前と後で何かギャップはありましたか?

 

私が温暖化防止活動推進センターにいたときは、比較的デスクワークが多く、しずおか未来みらいエネルギーでも同程度のデスクワークだと思っていたんですが、全然違いましたね(笑)。人と会ったり、現地を調査したり、確実に外に出ることが増えました。これが入社前後での一番のギャップかなと思います。
村瀬洸生
村瀬洸生
水力発電調査での一コマ(写真:しずおか未来エネルギー)
大仁田千晶
大仁田千晶
地域エネルギーをファーストキャリアとして選択することをおすすめしますか?

 

新卒は、採用の際、有利な要素のひとつです。そういう時には、自分を試すためにも門が狭く、競争の多いところに挑戦したほうがいいのではと思います。その後でも遅くないので、いつかご当地エネルギーに来て活躍してくれると嬉しいです。

 

そうはいっても、ご当地エネルギーに新卒で採用されて、地域に貢献できる人材が来てくれたらやっぱり嬉しいですね。全国の会合に行ったときに、インターンや学生の若者はいますが、ご当地の会社に勤めている若手は少ないイメージなので、新卒が飛び込んでくることを望んでいます。

村瀬洸生
村瀬洸生

 

大仁田千晶
大仁田千晶
しずおか未来エネルギーのほしい人材像はどのようなものなのでしょうか?

 

外で行政や地域の人と関わるので、営業をうまくやっていける人材がいいかなと思います。水力をやっていく中で一般の方の土地の利用相談が必要になってきたり、行政相談に行かなければならなかったりするので、コミュニケーション能力が高い人は貢献できると思います。

 

温暖化防止活動推進センターの業務もしているため、新しい若い方がガンガンその役割も担ってくれると嬉しいです。対外的なスキル、コミュニケーション能力などを持った人が来てくれると、しずおか未来エネルギーの強みになります。

村瀬洸生
村瀬洸生

地元・長崎で考える将来

大仁田千晶
大仁田千晶
今後のご自身のキャリアにおける目標などはありますか?

 

まずひとつは、今取り組んでいる水力発電の候補地、これを何とか完成までこぎつけたいと思っています。

 

あとは、私の地元、長崎に戻って、そこで仕事をしたいと考えています。私の実家が農業をやっているので、環境に配慮した農業を通して、地域に還元できるような活動をしていきたいですね。まだまだ先のことなので、あまり具体的なところまでは考えていないんですけど(笑)

 

そして、もし私がしずおか未来エネルギーを辞めるとなった時には、新しい人が入ってくると思いますので、その方が熱意を持って再エネに取り組める環境づくりにも注力していく必要があると思っています。

村瀬洸生
村瀬洸生

 

大仁田千晶
大仁田千晶
長崎に戻って環境に配慮した農業をしたいとのことですが、それは農業と再エネを組み合わせたものを考えているのでしょうか?

 

そうですね。これからの時代農業で生き残っていくには環境配慮の観点は無視できないので、やはり再エネと農業を組み合わせることが必要だと考えています。そして、再エネも単に太陽光だけではなく、バイオマスなども上手くミックスさせながらやっていきたいなと思っています。
村瀬洸生
村瀬洸生

<おまけ>

植野翔斗
植野翔斗
業務全般を担っておられるのでかなり忙しい印象を受けたのですが、1日の具体的な流れを教えていただけますか?

 

日々の業務内容はタイミングによってまちまちです。太陽光発電の管理に関しては、毎日やる業務はなく、月に1回発電量と売上をチェックしています。発電所自体は7ヵ所あり、定期的なメンテナンスが必要なのは野立てになっている発電所1ヵ所のみで、主に草刈りを年に3回のペースでおこなっています。毎日ルーティンでやらなければいけないタスクは今のところないですね。

 

あとは、温暖化防止活動推進センターと共同で取り組んでいる温室効果ガス排出量算定業務があります。現在年間で約10自治体を算定していて、多くの統計資料からデータを集める等、かなり地道な作業に時間を要するため、業務のウエイトを占めています。

村瀬洸生
村瀬洸生
IAIスタジアムの太陽光発電(写真:しずおか未来エネルギー)
植野翔斗
植野翔斗
1人でかなりの業務を担っていると思いますが、残業は多いですか。

 

今はないかな。多くの仕事を行政やその関連団体と一緒にやっていることが多いので、業務契約期間の関係で年度末に業務が集中し、そこで残業があるぐらいです。
村瀬洸生
村瀬洸生

 

亀山晋平
亀山晋平
再エネの導入にあたって、事業者と住民とのコミュニケーションがうまくいかなかった事例を調べているのですが、小水力発電所をつくるにあたって、地域の理解を得て進めていくには何が重要だと思いますか?

 

小水力の場合は導入する場所が中山間地域になります。再生可能エネルギーは環境に良いというイメージがあるので、住民の方々は再生可能エネルギーを増やしていくことには賛成の人が多いですが、いざ自分の住んでいる地域で川から水をとって道路に管を埋めて発電所をつくるとなると話が変わります。

 

水車からちょっと音が出ますよということでお話を持っていくと「よそでやるならいいけどうちの地域ではやらないでよ」という反応がくることも多いです。中山間地域には高齢者の方が多く、あまり変化を好まないという地域もあります。

 

一方で地域によっては変化を積極的に受け入れるところもあり、住民の反応には地域性があると思います。そのため、再生可能エネルギーを導入する際は、うまくその地域を見つけていくことも重要だと思います。

村瀬洸生
村瀬洸生

 

亀山晋平
亀山晋平
でも小水力発電の場合は住宅の近くに導入するわけではないんですよね?

 

場所によりますが、私たちがご意見をいただいた地域に関しては、川から水をとって住宅が並んでいる道路に管を埋設する必要がありました。そういうことも原因のひとつとしてあり、その地域では合意を得られなかったです。

 

一方で、今検討している地域では、水を取って発電して川に戻すまでに住宅がないという点では、比較的いい地域を見つけられたと思います。地域の方々と話している限りでは、今のところご意見は出ていないので、可能性を感じています。

 

小水力は、たとえ地域住民の方々に意欲があってもいざ調査をすると事業採算性がとれない場合も多く、太陽光と比較すると実現可能性が低いと思います。

村瀬洸生
村瀬洸生

 

亀山晋平
亀山晋平
事業を進めていく上で法規制が大きな障壁になる場合があると思いますが、一番大変だったものは何ですか?

 

前提として、乱開発を防ぐためにも今の法規制はなくてはならないものだと思っています。その上で、事業の許認可を行う行政にノウハウが不足している点は問題のひとつだと思います。

 

今水力発電を実施している大手電力さんなどはノウハウを持っているため、行政も信頼してOKを出していることがあるかもしれません。しかし、私たちのように小さな事業者の場合は過去に申請事例が少なく、行政としてもノウハウが少ないため、許可に時間を要したり、許可が下りにくかったりします。

 

相談をたらい回しにされてしまうこともあります。行政にはノウハウを蓄積してもらって、地域で発電したい人がいれば全力でサポートできる体制を整えてほしいと思っています。

村瀬洸生
村瀬洸生

 

亀山晋平
亀山晋平
前例がないのであれば、国が一元化したガイドラインをつくることもできると思っていましたが、、、

 

国のガイドラインはすでにありますね。ただ、情報が古かったり、事例も県外のものであったり、参考にしてくれないこともあります。静岡県内でやりたいです!と相談しても、なかなか自分ごととしてチャレンジしてくれないです。許認可に関しても、先ほど話しましたが、時間がかかったり、許可が下りにくかったり、自治体によってバラバラな印象があります。
村瀬洸生
村瀬洸生

 

大仁田千晶
大仁田千晶
最後にぶっちゃけた質問になるのですが、お給料はどれくらいですか?

 

正直厳しい、ギリギリです(笑)。世間一般の株式会社より少ないと思います。一人暮らしであれば十分生活できると思います。扶養家族がいる場合は、もう、カツカツですね(笑)。

 

でも、これから小水力発電が増えて収益が増えてくることを考えると、伸び代はあると思います。今は小さな発電所が7つによる収入がメインとなっており、その上コロナでイベントがキャンセルされて、講演による収入の機会が減っているのも影響しています。

 

ただ、再生可能エネルギー導入・SDGsへの取り組みを支援してくれる金融機関はあるので、高額な小水力発電設備導入費用については困らないと思います。

村瀬洸生
村瀬洸生

参考情報

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