東日本大震災と、福島第一原発の事故によって深刻な被害を受けた福島県。震災支援や原発問題に向き合ってきた人々が、2011年11月に発足した「ふくしま会議」を中心に、これから福島で何をすべきかについて1年以上にわたって議論を重ねてきました。その中から原発に替わるエネルギーについても関心が高まり、2013年3月に自然エネルギーの積極的な利用を掲げる「一般社団法人会津自然エネルギー機構」が発足しました。

会津電力設立記者会見
2013年10月25日 会津電力設立記者会見

概要

事業社名:会津電力株式会社
本拠地:福島県喜多方市
ステータス:事業開始済み

設立のきっかけと事業概要

「地域の自立と再生可能エネルギー」会津自然エネルギー機構シンポジウム
「地域の自立と再生可能エネルギー」会津自然エネルギー機構シンポジウム

原発事故があった福島だからこそ、循環型エネルギーを取り入れていく責任が私達にはある。そのような人々の強い思いが結集した結果でした。

福島県は地熱や小水力など、もともと自然エネルギーのポテンシャルは非常に高く、それを活かせば、エネルギー自給も実現できると見られています。そのデータを基に、会津自然エネルギー機構では、自然エネルギーによる発電事業を行う地域の取り組みを支援したり、勉強会を実施するなど、会津地方の人々をつなぐ役割を担うような普及啓発活動に力を入れています。

さらに会津自然エネルギー機構を母体に、地域の発電事業を具体的に実現していく主体として「会津電力株式会社」が2013年8月に発足しました。資本金は300万円です。

会津電力は、喜多方市の大和川酒造店の当主である佐藤彌右衛門さんが社長となり、「原子力への依存を見直し、少なくとも10年内に県内のエネルギーを再生可能なエネルギーのみで供給する体制をつくる」という目標を掲げて歩みを開始しました。事業内容としては、発電設備の設置だけでなく、調査、研究、省エネのコンサルティングなど、幅広く地域社会を自立型にするための活動をめざし、自治体や地元金融機関とも協力体制をつくる予定にしています。

特徴

2013年9月時点で、会津電力はまだ発足したばかりですが、事業化に向けて積極的な動きを進めています。大きな特徴としては、原発事故で甚大な被害を受けた福島でできた本格的なご当地電力会社だということです。

原発事故を受けて動き始めたご当地電力会社は全国で多数ありますが、多様な自然エネルギー源を活用してエネルギーを自給し、それを通じて地域の自立を図るという思いは、どの地域よりも強いはずです。

また、社長である佐藤彌右衛門さんの強いリーダーシップも挙げられます。彌右衛門さんは、寛政2年(1790年)創業の大和川酒造店の9代目当主。同店では、会津で自社の田んぼを耕し、「農」にも挑戦するなど積極的な酒造りを行うとともに、喜多方で町づくりを行ってきた地域の名士としても知られています。

「食とエネルギーの自給率の高い福島は、これまで東京の植民地のような状態だった。そこから自立して、独立したい。」という彌右衛門さんの強い思いが、会津電力設立に結びついたと言えるでしょう。

しかし、会津と一口にいっても、対象としている地域は広く、地域によって事情が異なります。そのため会津自然エネルギー機構や会津電力には、それぞれの地域から集まったメンバーが、地域の実情に合わせた決めの細かい取り組みを実現していくために検討を重ねています。

設置設備について(2013年10月現在)

2013年10月時点では、まず第一期のプロジェクトとして陽光発電事業の準備を進めています。2015年の秋までに、合計11カ所に設備を設置して、東北電力への売電を検討しています。合計出力は約2メガワット(2,000キロワット)で、約600世帯分の電力にあたります。

11ヶ所の中ではじめに手がけるのが、最大出力(1メガワット)となる雄国地域(喜多方市)の太陽光発電設備で、2014年9月には稼働する予定で進めています。

第一期の太陽光発電事業を通して企業体力と信頼関係を培い、第二期以降では地域の川や森を活かした小水力発電や、木質バイオマスなども手がけようと検討中です。また、設備の周辺に子どもたちの教育施設もつくり、自然エネルギーについて学べるようしたいという構想もあります。

既に稼働している設備は出力15kWで、そこで発電した電力を使い、大和川酒造でお米をシャンパンづくりを行います。こちらは、関心を持ってもらうための取り組みとして行われています。また、会津に多く存在する河川を利用する小水力発電も実施することを見越して調査を進めています。

その後、段階的に規模を拡大する予定ですが、発電そのものが目的というよりも、地域の自立をどのように実現するかに重点を置いて活動をしていきます。

資金面では、地元金融機関からの融資や一部補助金の利用に加えて、市民出資などを通じて全国の市民が参加する仕組みも検討中です。アイデアの一つとして出ているのは、出資者への配当として、会津の特産品など届けるといった農家さんを応援する取り組みも想定しています。事業はパネル以外は地元企業に発注することになります。

ステークホルダー

  • 一般社団法人会津自然エネルギー機構(発電事業の研究と利用の推進による、普及啓発、会津各地の発電事業のサポート、自然エネルギーに関する学習会の開催など)
  • ふくしま再生可能エネルギー事業ネット(福島県での地域主導の再生可能エネルギー事業の支援)

キーパーソンからのメッセージ

佐藤彌右衛門さん

佐藤弥右衛門さん(会津電力株式会社社長・大和川酒造店9代目当主)

”震災前までの福島県は、食料自給率がカロリーベースで1000%。そしてエネルギーは原発を除いても数百万キロワットありました。自然エネルギーのポテンシャルは非常に高い地域です。でも、地元でつくった電気は都会に持って行かれ、都会から買ってきた。福島は、都会の植民地のような状態だったのです。原発事故を受けて、そんな状態から自立していかなくてはいけないと強く思いました。

私は、飯舘村のお米を使って30年以上お酒を作ってきましたが、放射能によってそれができなくなった。放射能の影響は何万年も続きます。それは人間がコントロールできないものです。一方、自然エネルギーは福島にたくさんあって、循環するエネルギー源です。私はそのエネルギーを使って、地域の力を強くするべきだと考えました。千里の道もまずは一歩から。私の子や孫たちにとって良い選択をするために、今から種を植えるべきだと思っています。”

お問い合わせ

会津電力株式会社
〒969-0852
福島県喜多方市天満前8845-3
TEL: 0241-23-2221
FAX: 0241-24-3939

関連リンク

(取材・記事:高橋真樹)

全国ご当地電力レポート