一般社団法人全国ご当地エネルギー協会は、水俣市薄原(すすばる)地区において「水俣薄原太陽光発電所」を設立いたしました。2018年1月21日に、竣工式を終了し、1月末より1.2MWの系統連系がはじまりました。関係者の皆様に心より感謝申し上げます。

冬晴れの素晴らしい天候に恵まれた竣工式は、太陽光発電所のある小高い山の上から不知火海を望みつつ、全国より48名の方々を迎えて晴れやかに執り行われました。水俣病患者の家族の会や薄原地区自治会長はじめ熊本県知事(代理)にもご列席いただき、由緒ある「水俣八幡宮」の神主さんによる祝詞の響きが透き通った青空に広がっていくかのように、和やかに、そして、水俣の人々の希望となるように全員で祝うことができました。

事業の特徴

水俣薄原太陽光発電所の特徴は、発電事業だけでなく、売電収入の一部を活用して「基金」を設立し、水俣の地において社会的事業の展開をめざしていくことです。また、事業形態としての特徴は「リースモデル」を採用していることです。

基金

この事業では、売電収入の一部を活用して、社会貢献を目的とした「基金」を立ち上げます。構想されている「熊本水俣再生基金(仮)」は、公害の原点である水俣病、そして、忘れてはならない福島の原発事故、この2つをテーマに「いのち」を考えることを目的として、薄原地区はじめ地域の方々とともに、この太陽光発電所を地域貢献の核として活用していくことをめざすものです。

さらに、この原資には、一般社団法人グリーン・市民電力が発電する「熊本復興ソーラー」の一部売電収益も含まれる予定です。このグリーンコープくまもとの配送センターの屋根を活用して創られる太陽光発電事業は、熊本震災復興支援に加えて『水俣病展』(2016年秋)を成功させたグリーンコープの活動の一環です。現地において、環境や食の安全に向きあってきたグリーンコープのみなさんと共同で「基金」を設立し、水俣はじめ地域の人々のお役に立てる社会事業を展開してまいります。

リースモデル

この事業では、全国ご当地エネルギー協会が会員団体と協働で開発した「リースモデル」を活用しています。

一般的に、地域で小規模な発電事業を実施する団体は資金調達が難しく、事業化の壁に直面することとなります。こうした課題を克服するひとつの方法として、事業主体がリース会社を通じて太陽光パネルを調達し、初期費用を低く抑える「リースモデル」が開発されました。

当協会が主体となる水俣薄原太陽光発電所では、このリースモデルを適用し、その具体的な手続きや課題等を明らかにし、さらに活用しやすいモデルへと改善を図り、ご当地エネルギー事業の拡大につなげることをめざしています。

水俣・福島からの再生

竣工式の翌日午後には、水俣市南部もやい直しセンターにて、「熊本水俣再生基金(仮)」の発起人集会が行われました。発起人14名を含めて、関係者の方々25名が集まりました。発起人メンバーには水俣病患者である緒方正人さんや患者家族の会、「水俣病を語り継ぐ会」の方々はじめ支援や研究を続けてこられた皆さんにもご参加いただいています。当日は、基金設立の趣旨を確認し、どんなアイデアで社会貢献事業を展開していくことができるか、自由なディスカッションが行われました。

水俣病が公式確認されてから55年という時を経ておこったのが福島原発事故です。この2つの出来事は、その時の社会が抱える問題や見えてくる事象、そして国の対応などがあまりにも似ていると言われています。発起人集会後に訪ねた現地見学ツアー(写真)はそれを物語るものでした。どちらも経済が優先され、人のいのちが軽んじられていること、どちらも東京オリンピック開催に沸き立ち、地域で起っている事態の内実や深刻さが見えないようになっています。その犠牲になってきたのは、常に、市民であり、自然豊かな地域であることを胸に、「いのち」の尊さ・重みを未来につないでいくため、この「再生基金」を発足することを確認しました。

今後の展開にむけて、ぜひみなさまのご参加をお待ちしています。

事業概要

事業名

水俣薄原(すすばる)太陽光発電所

事業場所

熊本県水俣市薄原字倉谷、字白木

発電事業者

一般社団法人全国ご当地エネルギー協会(代表理事:佐藤彌右衛門)

設備所有者

城南エナジー株式会社

用途

太陽光発電および地域貢献事業

事業規模
  • 敷地面積 33,604m²(約10,371坪)
  • 発電設備容量 1,180.0kW
  • モジュール出力 1,814.4kW(約500世帯分の発電量)
施工・保守管理

株式会社ダイサン