全国ご当地エネルギー協会は、平成28年度より2年間にわたり、標記の農水省補助事業を実施してきました。本事業では、農林漁業関係者が、農山漁村の活性化に資する再生可能エネルギー事業を構築するための支援をおこなってきました[1]2018年2月7日(水)、本事業の支援対象事業者が、今年度の取組の集大成を報告する「最終研修会」を都内の会議室にておこないました。

[1] 「農山漁村活性化再生可能エネルギー事業化サポート事業」は、2013年度から5年間に渡り農林水産省で実施された補助事業で、2014〜2015年度は日本再生可能エネルギー協会(JREP)、2016〜2017年度は当協会で事業を実施しました。「農山漁村活性化再生可能エネルギー事業化推進事業」にて採択を受けた事業者を対象に、研修会や視察、個別サポートなどを行い、専門的な観点から支援をおこなってきました。

報告をおこなったのは、全国で事業化に取り組む7地域6事業者で、小水力発電を計画する事業者が5地域4事業者、バイオマス発電が2地域2事業者(木質バイオマス、メタン発酵各1事業者)となっています。

研修会には、農水省食料産業局バイオマス循環資源課再生可能エネルギー室より3名の担当者、専門家として石坂朋久氏(全国小水力利用推進協議会)、松原弘直氏(認定NPO法人環境エネルギー政策研究所)、吉岡剛(同左)の3名を迎え、各事業者の報告後に、それぞれ質疑応答、コメントをいただく形式で進行しました。それぞれの取り組みについて、以下のような成果と課題が見えてきました。

小水力発電の課題

小水力発電を計画している事業者は、地理的特徴や発電規模はそれぞれですが、基本的には小規模であるため、事業採算性や資金調達に課題を抱える事業者が多くなっています。また、共通して見えてくる課題のひとつに、地域との合意形成があります。

小水力発電は、周辺住民に加え、漁業組合、自治体等の利害関係者が多く、合意形成のプロセスに時間を要するという特徴があり、今回発表した事業者も、合意形成には多くの時間と労力を費やし、苦労してきたことが伺われました。

その一方で、専門家の支援を得て難題を解決し、事業化に近づいている事業者も見られ、取り組みの成果も共有されました。

バイオマス発電の課題

バイオマス発電は、その他の再生可能エネルギー発電事業と異なり、原料調達が必要となるため、事業化の難易度が非常に高いと言われています。また、発電だけでなく、排熱の利用を効率的におこなうことが、採算性をあげるためには重要となります。

こうした、他の再エネ発電にはない課題がある中で、検討を進めている事業者はひとつひとつ着実に取り組みを前進させています。

外部要因:系統の空き容量不足と資金調達

発電種別共通の課題となるのが、系統接続の空き容量不足問題です。改正前の固定価格買取制度で規定されていた優先給電と接続義務が削除されたため、電力会社から系統空き容量がないとされ、事業化が困難な状況が生まれています。

また、資金調達については、地域の金融機関もこのような地域主導型の小規模発電事業についての知識や経験がないため、その事業性を見極め、適切に融資をおこなうことができる人材が不足している現状があります。今後はそうした人材の育成や教育メニューが必要であることなども、専門家から指摘いただきました。

今回の最終報告会のなかで見えてきた課題の中でも、特に系統接続の空き容量不足等の状況は、国レベルの解決が求められる重要事項です。

全国ご当地エネルギー協会は、全国の農山漁村にある豊富な資源から再生可能エネルギーが創られ、地域に雇用が生まれ、コミュニティの活性化が促進されることをめざして、引き続き、活動してまいります。

平成29年度 採択事業者

  • 株式会社大商金山牧場
  • 特定非営利活動法人アースライフネットワーク
  • 資源利用促進協同組合
  • 合同会社あば村
  • 地域小水力発電株式会社(野々川、畑山地区)
  • 特定非営利活動法人いきいきみはら会