当協会は、政府による固定価格買取制度の見直しや系統接続問題の検討に際して、下記の通り、談話を発表いたします。


地域創生のため、地域主導の自然エネルギー利用を
最大化する系統運用を求める(談話)

全国ご当地エネルギー協会
代表幹事 佐藤彌右衛門

北海道電力、東北電力、四国電力、九州電力、沖縄電力から、自然エネルギー発電設備による送電網への接続申込みへの回答を一次保留するとの発表が相次いでなされています。事態をうけて政府も、固定価格買取制度の見直しや系統接続問題の検討に着手しました。

全国ご当地エネルギー協会は、地域主導型の自然エネルギー事業に取り組むネットワークとして、一部電力会社による唐突な措置が混乱をもたらしている事態を深く憂慮しています。そして、今後の対応は日本のエネルギー政策の今後を大きく左右するだけでなく、政府が掲げる地方創生の実現に向けても試金石になると認識し、自然エネルギーの促進につながる解決策が見出させることを強く望みます。

日本において、自然エネルギーはいまだ本格的な導入に遠く及んでいません。また、地域資本による自然エネルギー事業によって地域経済の再生をめざす取り組みは日本各地で端緒についたばかりであり、とりわけ東日本大震災・東京電力福島第一原発事故からの復興にむけて、地域に雇用や望ましい経済循環を生み出し、みずからの力で復興を前進させようとする取り組みが、福島県を含む東北地方でもようやく芽生えてきたところです。一部電力会社による今回の措置が、そうした取り組みを萎縮させることがあってはならないと考えます。

以上の認識に基づいて、今後の議論にむけていくつかの提言を申し述べます。

1. 徹底した情報公開と当事者参加による開かれた議論を

系統接続に関する情報がきわめて不透明ななか、一斉に「回答保留」の通告がなされたことが大きな混乱をもたらしたのは明らかです。あらゆる議論の大前提として、こうした公共政策に関しては電力会社や政府による徹底した情報公開がなされ、説明責任が果たされることを求めます。また、固定価格買取制度の見直しや電力システム改革の制度検討にあたっては、公共政策として公論を尽くして社会的合意を導くべく、地域主導型自然エネルギー事業者を含むあらゆるステークホルダーの参加を得て開かれた議論を行なう場をつくるよう求めます。

2. 今すぐに実施できる対応策を明らかにすること

日本における自然エネルギーの導入量・比率は、欧州などの先行諸国に比べれば、まだ低いレベルに留まっているという事実認識からスタートし、固定価格買取制度が定める「接続義務」を履行するためにすぐにも対応できるメニューを早急に実施することが大切と考えます。揚水発電や会社間連系線を最大限活用するとともに、石炭火力などのベース電源を積極的に変動運用させるなど、自然エネルギーをベースとした系統運用の構築にむけてすぐに対応できることは数多くあるはずです。

3. 自然エネルギーの最大限の導入にむけたロードマップとルールの再構築を

今回の措置は、あくまで設備認定量や接続申込み量に基づく緊急的対応であり、既存の導入量からみれば系統の容量にはまだ十分な余裕があります。よって、今後さらに自然エネルギーの導入を加速化・最大化させるという基本方針のもと、系統接続に留まらない自然エネルギーの導入促進のロードマップが策定され、広く国民と共有されるよう望みます。

4. 送電網を「公共的な資本」と位置づけたルールづくりに着手すること

今回の事態を契機に、送電網を「公共的な資本」と考える社会的合意づくりを進めることが重要です。最近、自然エネルギー発電事業者に要求される連系負担金が高額化しつつありますが、その背景には、新規の自然エネルギー発電設備の接続によって必要となる既存送変電設備の増強・新設費用負担が自然エネルギー事業者に求められることにあります。この点について、送変電設備を「公共的な資本」と捉えて、その増強費用は送電利用者全体の利便性向上につながるものと位置づけることで発電事業者ではなく利用者全体で公平に負担する方法もあるはずです。そのようなルールづくりの検討を始めるよう求めます。

5. 分散型エネルギーシステムにむけた制度構築を前倒しで進めること

今回の事態を招いたことは、大規模集中型から小規模地域分散型のエネルギーシステムへの大転換に向けた制度構築が後回しにされてきたことにも原因があると認識します。とりわけ、自前の大規模発電設備による売電利益の最大化を追求する地域電力会社が、同時に安定供給を使命とする送電網の維持管理も行なっていては、分散型の自然エネルギーを最大限導入するための積極的で公平な系統運用は期待できません。地域電力会社内の発電部門と送電部門がそれぞれに独立して使命を果たせる仕組みを整えるとともに、できる限り早期に、独立・中立的な送配電事業者が計画的に送配電網を整備し、需給にあわせて柔軟に系統運用を行なう透明性の高いシステムを構築することが重要です。

当協会には従来から、各地の「ご当地エネルギー」事業者から電力会社との系統連系協議における困難を伝える声が寄せられておりました。そこで、法が定める「接続義務」が適正に履行されていないことを伺わせる声をうけとめ、9月より系統接続における障壁の実態についての調査を開始し、まだ調査を開始したばかりであるにもかかわらず大きな課題が見えてきています。今後引き続き各地からの報告を集積・分析し、公論形成に役立つよう報告や提言を行なう予定であることを申し添えます。

以上

参考:ブリーフィングペーパー系統連系問題と再生可能エネルギー本格的導入のための検討」(認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所、2014年10月2日)