全国ご当地エネルギー協会リレーエッセイ7
市民エネルギーやまぐち非営利型株式会社 代表取締役 坂井之泰氏
市民エネルギーやまぐちは、「非営利型株式会社」、「利益三等分の原則」、そして「プラットホーム型組織」という3つの特徴ある仕組みを活用した「21世紀型」の新しい社会ビジネスモデルを掲げています。
非営利型株式会社とは、自然エネルギー事業から得た収益を地域に還元することを会社の目的とするというスタイルの会社です。長期的には売電収入による地域への貢献をめざしています。
「利益三等分の原則」とは、いわば地域協働の理念を具体化したものです。市民エネルギーやまぐちは、自らが設置工事などを手がける事業者になるのではなく、県内各地の事業者が協働できる「プラットホーム型」の社会ビジネスモデルを立ち上げました。そこに集った事業者が協力することで、地域の自然エネルギー産業を育成しようという狙いがあるのです。初期投資は金融機関からの融資と市民ファンドでまかなえるため、土地はあるけれど資金がないというオーナーも参加できるようになります。これでパイそのものが広がりました。
そして、「利益三等分の原則」によって地域還元をめざす「市民エネルギーやまぐち」と、設置事業者、そして土地オーナーの3者に売電収益が分配されることになります。オーナーの初期投資の負担は減り、事業者も初年度だけでなく長期間にわたって収益が入るのです。この枠組みが機能することで、3者だけでなく、地域全体にも利益をもたらす仕組みになるはずです。
「非営利型株式会社」「利益三等分の原則」「プラットホーム型組織」というチャレンジはスタートしたばかりですが、今後は山口をモデルにして、他の地域でも取り組まれていく可能性があります。山口では2014年4月現在、参加している太陽光発電事業者は4つで、内訳は周南市に2つ、山口市に1つ、岩国市に1つとなっています。2014年度は各地の事業者が持ち寄った案件をもとに、約4.5億円をかけて合計出力1,200キロワットの太陽光発電事業をすすめています。
市民エネルギーやまぐちの取り組みは新しいビジネスモデルだけに、多くの事業者に広げるには時間がかかると思いますが、今後は発電設備や参加事業者を山口県全域に広め、さらに県外の事業者のアドバイザー的な存在にもなっていきたいという構想を描いています。この取り組みを通して、それまで地域ごとにバラバラだった山口がさまざまな意味でつながっていくきっかけになればいいと考えています。
『新エネルギー新聞』第8号(2014年9月22日)掲載