環境エネルギー政策研究所(ISEP)インターンが、全国ご当地エネルギー協会会員団体にインタビューをおこなうご当地インタビュープロジェクト。第5回は、北海道を拠点にエネルギーの地産地消を進める鈴木亨さんにオンラインでお話をうかがいました。
ご当地インタビュープロジェクトについて
ISEPのインターンが、全国ご当地エネルギー協会会員団体にインタビューをおこない、必ずしも一般的には知られていないご当地エネルギーの魅力を伝えるプロジェクトです。
#5 北海道グリーンファンド
今回インタビューしたのは…
鈴木 亨(すずき とおる)さん
特定非営利活動法人北海道グリーンファンド 理事長 / 特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所 理事 / 一般社団法人北海道再生可能エネルギー振興機構 理事長 / 一般社団法人全国ご当地エネルギー協会 共同代表
1957年北海道生まれ。自治体職員、生協職員を経て、特定非営利活動法人北海道グリーンファンドを1999年に設立し、2011年に理事長就任(現職)。誰でも無理なく地球環境保全に貢献できる「グリーン電気料金制度」を開始し、日本初の市民出資型の風力発電事業を行うとともに、市民風車のパイオニアとして各地の取り組みの支援も行う。株式会社市民風力発電(2001年)、株式会社自然エネルギー市民ファンド(2003年)を相次いで設立し、代表取締役を兼務。2012年12月一般社団法人北海道再生可能エネルギー振興機構理事長に就任。2020年7月一般社団法人全国ご当地エネルギー協会共同代表に就任。
北海道グリーンファンド立ち上げの経緯
食とエネルギーって私たち人間が生活していく上で欠かせないものですから、向き合う羽目になりました。
その後、北海道電力の泊原発3号機の増設計画や、COP3での京都議定書の合意などが折り重なり、これまでのような反対運動だけではなく市民が主体となって新しい仕組みをつくっていかないと、社会は変わっていかないと思いはじめたんですね。
一方で、ヨーロッパとかアメリカでいわゆるグリーン電力プログラムが90年代後半から登場していったんですね。それを真似るかたちで日本でもできないだろうかということで、飯田哲也さんや当時東北大学の長谷川公一先生の力を借りながら、グリーン電気料金という仕組みを生協で最初にはじめました。
これを北海道のみんなの取り組みにできるように1999年7月に北海道グリーンファンドを設立しました。その後、市民風車の第一号機「はまかぜちゃん」が2001年の9月に誕生しました。
まず、北海道電力から電気代請求がグリーンファンドの事務局に来て、グリーンファンドが北海道電力にかわって会員の口座から電気代を引き落とす。その電気代を今度はグリーンファンドが北海道電力に、会員さん本人に代わって払います。電気代を引き落とす際に5%分を上乗せし、コツコツ毎月積み立てて、自然エネルギー市民共同発電所の建設資金にしましょうというかたちではじめたんですね。
5%余計に払うんじゃなくて、その分ちょっと省エネしましょう、と。自然エネルギーと省エネルギーを国とか電力会社に何か要求することだけじゃなくて、一軒のご家庭の家の中でそういう取り組みができるシステムをつくりたいなと思ってはじめました。
それを生協の組合員だけではなく、広く一般の市民も参加できる器をつくろうと、北海道グリーンファンドを設立したんです。
ふたつめは、経済性です。固定価格買取制度(FIT)が入る前でしたけど、電力会社が自主的に買い取るプログラムがあったんですね。ですから市民事業としてやるとすれば、キャッシュフローが成り立つ風力発電がいいということがありました。
北海道のエネルギー事情
北海道内の送電線や北海道と本州をつなぐ地域間連系線が細くて電気を送れなかったという課題もあったんですけど、だんだんいろんな改善の動きが進んできていますので、自然エネルギーの取り組みが増えていくのかなとは思っています。
北海道電力は、加圧水型を採用している電力会社で、唯一再稼働できてないんです。賛成の人も反対の人も、もう動かせないんじゃないかって思っている北海道の人が多いです。裁判所での判決が出たのも、原子力規制委員会に指摘されたように、電力会社としての体制に問題があるっていうところが一番大きかったんじゃないかなって思います。
一番言いたいことは、無理して原発を動かさなくたって、これだけ自然エネルギーのポテンシャルがいっぱいあるのだから、むしろこれを活かした方が将来的に儲かる電力会社になるんじゃないっていうことです。
エネルギーをもっと身近に
また、「生活環境の変化が心配だな…」と思う人は以前より増えてきています。2020年に翌年からの入札への移行を前に、多くの事業者が駆け込みでFIT申請をしたんですね。中には十分な説明や合意形成が無いまま計画が発表されたケースもありましたので、そりゃあ、誰だって不安になります。ある意味制度上の問題でもあります。
不安や心配に思う人達には、調査した結果を丁寧にわかりやすくお伝えしていくっていうことをやっていけばね、みんながみんな批判的ではないのかなって思うんですけどね。
日本の風力はほとんど増えていないのですが、それでも約2,500基の風車が稼働しています。事業者まかせにしないで、国が主導して稼働後のデータを調査・収集し、客観的かつ定量的に評価する必要もあるのではないかと思います。地域で起こる無用な分断を減らし、具体的な解決を目指して冷静な議論を練り上げることが、社会合意のプロセスにとって必要なことだと思うんですね。
それと何よりも、東京の大きい会社や海外資本の会社が地方の地域に来て大規模事業をすることへの拒否感みたいなものがあると思うんですね。これまでの大規模開発と同じ絵になってしまっているということです。
地域が主体になって取り組む発電事業、あるいは地域の会社が工事を請け負ったり、地域の住民たちが参加する取り組みというのをもっと広げていかないと、日本の自然エネルギーは根付いていかないと思います。
おじいさん、おばあさんが多い地域にだんだんなってますよね。
私はできるだけ若い人たちが家族を持ってその地域で暮らしていけるような事業にしていきたいなとずっと思っています。
高校を卒業するとみんな都会に出てしまうんですけど、もし仕事があるんだったら残りたいっていう子も結構多いです。勤め先が役場か農協しかないというところで、風車があればその保守管理があり、それにプラスして例えば地域の河川、農業用水路で小水力、酪農地帯なら畜産バイオガスがある。そういったものを組み合わせながら仕事をつくれると思うんですよね。
最初は1人かもしれないけど、少しでも若い家族が増えていけるような地域になればいいな、というようなことを、おじいさん、おばあさんと話してると「そりゃいい、ぜひやってくれ!」という方は結構多いですよ。
20年間固定価格で買い取る FIT っていう制度ができて、ようやく銀行も融資するようになってきました。今は銀行の融資と市民ファンドを組み合わせたストラクチャーをつくっています。
ESG もそうですが、いま金融機関も脱炭素社会への移行の中で、大きな役割を期待されていますし、グリーンの名のついた金融手法も競っておこなわれようとしています。地方の金融機関にとって、地元のエネルギー事業は格好の融資先だと思いますので、みなさん、がんばってほしいですね。
ezorockは毎年石狩市で開催される「ライジング・サン・ロックフェスティバル」での環境対策を行うなど、持続可能な社会の仕組みづくりを若者中心で取り組んでいます。「ライジング・サン・ロックフェスティバル」には、シャワーブースもあるので、ゆくゆくは100%バイオマスボイラーで沸かしたお湯を使えればと考えています。
今後は北海道でのバイオマスボイラーの導入拡大を目指して、ezorockの若者たちの仕事にも繋がる取り組みになっていけばいいなあと思っています。
鈴木さんの目標
政策や制度の壁っていうのはまだまだやっぱりあります。ですから、ご当地エネルギー協会として、国とかに働きかけをしていくというところはすごく大事な役目だと思っています。
また、ご当地エネルギー協会中でも、各地の事業者によって、自然エネルギーの事業に取り組める力のある地域もあれば、経験が無く取り組むのが難しい地域もあります。まずは共同で行うことで難しい地域の事業者ができるようになっていくことも、ご当地エネルギー協会の役目のひとつかなという気もしてますね。
先ほどバイオマスボイラーの取組みの話をしましたが、これは全国ご当地エネルギー協会でご一緒している徳島地域エネルギーさんと連携した取り組みなんですね。私たちにはバイオマスボイラーの経験が無いものですから、徳島地域エネルギーさんのご支援を頂いて、ゆくゆくは自立していこうという計画なんです。
あと、やっぱり電力会社を変えていくっていうことに挑戦していきたいなという気持ちはありますね。 言い方を変えれば道民ファンドで北海道電力を買収するということですね。
北海道の「道」と電力会社の「電」の間に市民の「民」を入れて「北海道民電力」にしようということをずっと言ってきたんです。
市民ファンドの経験を生かして7%の株式シェアを取れたら、北海道電力の筆頭株主になれるんですね。北海道には自然エネルギーのポテンシャルがあるので、自然エネルギー100%の電力会社に変えていくということができたらいいなって思っています。自然エネルギーで利益を出して、道民に利益配当していくってことです。
参考情報
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