2026年10月9日 一般社団法人全国ご当地エネルギー協会

1. 結果公表の概要

農林水産省は2026年10月9日、営農型太陽光発電の制度改正に関する3件の意見募集の結果を公表しました。いずれも7月24日から8月22日まで募集されたもので、当協会は3件すべてについて意見を提出しました。

案件番号 対象 意見提出者数 案からの修正
550004381 農地法施行規則及び農山漁村再エネ法施行規則の改正省令 135 技術的修正のみ
550004382 設備整備計画の認定等に関する省令の改正 69 示されず(案のとおり制定)
550004383 農山漁村再エネ法の基本方針の改正 167 示されず(案のとおり制定)

新制度では、営農型太陽光の新規導入に市町村が作成する基本計画と設備整備計画の認定が必要になります。農地法施行規則の施行は2027年4月1日で、基本計画のない市町村でも施行後4か月間は従前の農地法による一時転用許可申請ができます。

2. 全体評価

制度の骨格は案のまま確定し、当協会が求めた条文修正は実現しませんでした。ただし農水省の回答には「執務参考資料で明確化」「基本計画の雛形を整備」「説明会等で支援」が繰り返し登場し、柔軟な運用の余地はこれらの運用文書に委ねられました。

当協会は、「営農実態のない名ばかりの売電事業」への厳格な対応には賛同しつつ、入口の一律規制が地域主体の健全な取組まで排除しないよう求めてきました。結果は、特例や運用上の明確化による「一部反映」が中心です。当協会と同様の主旨の意見は各案件で多数寄せられ、たとえば市町村への支援体制を求める意見は38件、遮光率30%基準の見直しを求める意見は基本方針案だけで64件にのぼりました。

3. 当協会意見の反映状況

(1)農地法施行規則等の改正(経過措置・移行期間)

当協会の意見 農水省の回答・対応 評価
最低2年間の移行期間と、旧手続(農地法単独の一時転用)の条件付き併用 施行までと施行後4か月で基本計画が作成できるよう、作成雛形等を整備するとの回答。経過措置は4か月のまま 反映せず
国・都道府県による伴走・代行支援(雛形提示、専門職員派遣、予算確保) 基本計画の雛形、執務参考資料、説明会、地方農政局等の相談窓口で支援。人員派遣や予算の明言はなし 一部反映
事業者からの基本計画提案に対する回答期限と不採用理由の書面開示 事業者からの提案は可能との説明にとどまり、手続化は示されず 反映せず

このほか省令の技術的修正で、温対法の地方公共団体実行計画(促進区域)を基本方針に適合する形で定める市町村では、地域脱炭素化促進事業計画の認定を通じた道も明示されました。既存設備の再許可は、基本計画の有無を問わず当分の間、農地法で申請でき、「当分の間」を終える際には必要な期間を確保するとされています。

(2)設備整備計画の認定省令(申請・報告手続)

当協会の意見 農水省の回答・対応 評価
他制度に提出済みの書類(農地法、FIT/FIP等)の再提出不要化 「可能な限り手続の合理化」を執務参考資料で図るとの回答。具体策はなし 一部反映
小規模・自家消費・農業者主体案件向けの簡易様式 記載要領等の整備と相談窓口での支援。簡易様式の創設はなし 反映せず
共同申請者となる営農者の責任範囲の限定明記 撤去費用は設備設置者が負担する旨の誓約書を求める。撤去時の対応を明確化する 一部反映
軽微変更の簡素化と営業秘密の保護 営業秘密は「適切に管理」する。軽微な変更は執務参考資料での合理化に委ねられた 一部反映
年次報告のWeb化と、優良案件の更新手続簡素化 デジタル化は「運用やコスト面の課題」あり。優良事業者へのインセンティブは現時点で予定なし 反映せず

(3)基本方針(営農型太陽光の認定基準)

当協会の意見 農水省の回答・対応 評価
遮光率30%未満を足切りとせず、代替評価ルートを設ける。特例の根拠を公的機関の試験に限定しない 30%基準は維持。科学的根拠に基づき基本計画で特例を設けることができる。根拠は市町村等と農業者・民間の共同試験も対象とする考え 一部反映
年間50万円実績は参考指標とし、認定新規就農者などの代替証拠を認める 「必要最低限の実績」として維持。新規就農者はまず栽培経験を積むべきとの回答 反映せず
直売所・ネット直販・加工用・契約栽培・新規特産品を広く認める 「一般的な販路」は実際の販売方法を制限しないと明言。執務参考資料で明確化。品目は地域で一般的に栽培されるものという要件は維持 一部反映
果樹等の多年生作物に営農確立期間(5~7年)を認める 3年以内の計画収量確保は維持。科学的根拠があれば基本計画の特例で対応 一部反映
最低地上高3m・通路幅4mを作目や農機に応じた性能基準に改める 「おおむね」の数値基準を維持。特例で対応 反映せず
地域主体・自家消費・防災型などへの優先支援と、市町村の目標設定から営農型を除外しないこと 自家消費型は「望ましい取り組みの一つ」です。金銭以外の利益還元も評価。市町村は基本計画で関連目標を設定できる。優先支援の仕組みは示されず 一部反映
入口規制から実績確認・悪質案件への重点指導へ転換。全国データベースで自然要因による減収を正当に評価 転換は「実務的にも困難」。収量は同じ年の地域平均と比較するため、猛暑などの影響は反映される。データベースは将来的に検討 一部反映

4. 残された課題

  • 経過措置後の「空白地帯」:基本計画は市町村の任意です。策定しない市町村では、2027年7月末以降に新規の営農型太陽光ができなくなります。事業者の計画提案に対する回答義務や、都道府県による補完の仕組みは示されていません。
  • 特例の実効性:基準を超える取組は、市町村の基本計画における特例に頼ることになります。その根拠となる複数年の試験を、誰がどのように担うかが決まっていません。
  • 新規就農者の参入:50万円の実績要件により、営農型を就農初期の収入の支えにする道は狭まったままです。
  • 事務負担:簡易様式や報告のデジタル化は見送られ、家族経営や地域の小規模事業者の負担は残ります。
  • 一時転用許可期間の短縮:撤去費用チェック強化のため短縮を検討するとされており、資金調達や事業の予見可能性への影響が懸念されます。

5. 今後の当協会の取組

制度の枠組みは確定しました。今後の焦点は、国が整備する執務参考資料、基本計画の雛形、各種様式、および記載要領です。当協会は次の点に取り組みます。

  1. 販路の考え方、遮光率の算定方法、利益還元の記載方法、合意形成の進め方などについて、実践域用文書・運用文書に、地域の実践に基づく具体的な提案を行います。
  2. 市町村の基本計画策定と、事業者・農業者からの計画提案を、会員ネットワークを通じて支援します。
  3. 特例の根拠となる共同試験や実践データの蓄積を、研究機関や自治体と連携して進めます。
  4. 制度開始後の状況を検証し、必要な見直しを継続的に求めます。農水省も「制度改正の効果検証を行い必要に応じて見直す」と回答しています。

なお、今回の意見募集では提出していませんが、当協会は作物の一律な制限には反対しつつ、都道府県が推奨・振興作物を示し、それを活用する取組を優先的に支援する仕組みが有効と考えています。市町村の基本計画づくりを支える観点からも、今後の運用文書の検討の中で提案していきます。

参照資料

  • 農林水産省「意見・情報の募集の結果」(2026年10月9日、e-Govパブリック・コメント、案件番号
    550004381・
    550004382・
    550004383)
  • 当協会提出意見(2026年8月22日提出、3件)

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