地域主体の農業とエネルギーの取組を支える制度へ
2026年8月14日
一般社団法人 全国ご当地エネルギー協会
全国ご当地エネルギー協会は、営農型太陽光発電制度改正案について、地域主体の適切な取組を支える制度とするため、地域実践の現場から7項目の修正を提言します。
1.はじめに
全国ご当地エネルギー協会は、全国各地で地域住民、農業者、自治体、地域企業などが連携し、地域の自然資源を活かした再生可能エネルギーの導入と、地域経済の循環に取り組むネットワークです。営農型太陽光発電は、農業を続けながら地域で電気をつくり、その便益を農業者と地域へ還元できる重要な取組です。
営農実態をともなわない案件や、適切な営農継続が確保されていない案件に対して、厳格な指導と是正をおこなう必要性は共有します。一方、今回の制度案が示す市町村基本計画、遮光率30%未満、年間50万円以上の生産・販売実績等、品目・販路、収穫開始時期、最低地上高おおむね3m、農業機械の通路幅おおむね4m、詳細な申請・報告などが硬直的に運用されれば、地域主体で適切に取り組む案件まで進めにくくなるおそれがあります。
地域の農業は、品目、農機、ほ場、担い手、販売方法、電力の利用先が地域ごとに異なります。制度は、全国一律の仕様だけで入口を狭めるのではなく、農地を守り、農業を継続し、地域に便益をもたらしているかという実績を確認する仕組みにすべきです。地域の現場から、次の修正を求めます。
2.地域の現場から求める制度修正
2.1 遮光率30%未満を絶対的な足切り基準にしないでください
遮光率は設備配置を確認するうえで重要な指標ですが、農作物への影響は、品目、品種、地域の気候、季節、土壌、水分、パネルの高さ・向き・間隔、営農管理によって異なります。30%未満を全国共通の絶対的な適格要件にすると、地域の条件に合わせて適切な営農をおこなう案件や、新しい設備・栽培方法を排除するおそれがあります。
(1)遮光率30%未満を、追加資料を少なくして審査できる目安として扱い、絶対的な足切り基準にはしないでください。
(2)30%以上でも、品目ごとの日射条件、地域の気候、設備配置、類似地域の実績、対照区との比較、専門家の確認、事後モニタリングなどにより、適切な農業生産を確保できる案件は認定できる代替評価ルートを設けてください。
(3)特例に用いる証拠を、公的機関や大学による複数年の試験栽培だけに限定せず、民間データの第三者検証、農業試験場や農業改良普及員の意見、条件付き認定と事後確認も認めてください。
2.2 最低地上高3m・通路幅4mを性能基準へ改めてください
必要な高さや通路幅は、実際に使用する農業機械、栽培品目、仕立て方、作業工程、ほ場条件によって異なります。手作業や小型農機を中心とする営農では4mの通路を必要としない場合がある一方、大型農機を使う営農では4mでも不足する場合があります。
「実際に使用する農業機械、栽培方法、作業動線に照らして、安全かつ効率的な農作業が可能であること」という性能基準へ改め、農機の寸法、旋回、搬入出、作業者の安全、保守点検動線を案件ごとに確認してください。
2.3 年間50万円、品目、販路、収穫開始時期を一律の排除基準にしないでください
基本方針案の年間50万円以上の生産・販売実績等は、営農者の既往実績などから業としての農業の継続性を確認する趣旨です。しかし、過去の販売実績だけを足切り基準にすると、新規就農者、農業承継者、多年生作物、新たな地域特産品、荒廃農地の再生に取り組む農業者が不利になります。
(1)年間50万円以上の実績は、営農の継続性を示す証拠のひとつとして扱い、単独の足切り基準にはしないでください。
(2)認定新規就農者であること、専門家の助言を受けた営農計画、必要な労働力、研修実績、販売契約、農業法人や地域組織による支援などを、代替的な証拠として認めてください。
(3)消費者への直接販売、契約栽培、加工用農産物、新たな地域特産品なども、実需者との契約や販売計画によって認めてください。多年生作物などは、品目の生育特性に応じた営農確立期間と段階的な達成目標を認めてください。
2.4 市町村基本計画の未策定による制度の空白を防いでください
市町村の基本計画と地域の協議を通じ、農業との調和や地域への利益を確認する考え方は重要です。一方、基本計画の作成は市町村の任意であり、自治体ごとに人員、専門知識、予算が異なります。施行前申請や既存許可案件には一定の経過的な取扱いがありますが、基本計画がない市町村の新規案件は、4か月の経過措置終了後に手続へ進めなくなるおそれがあります。
(1)最終的な運用指針、標準様式、自治体支援策が公表されてから少なくとも2年間の移行期間を設け、その間は国の最低基準を満たす案件について旧手続を条件付きで利用できるようにしてください。
(2)国は、標準基本計画、標準協議会規約、標準審査要領、標準スケジュールを示し、地方農政局や都道府県が市町村を実務面で支援してください。必要な人員と費用も措置してください。
(3)事業者から基本計画の作成・変更提案を受けた市町村について、回答までの標準期間と、採用しない場合に具体的な理由を書面で示す手続を定めてください。
2.5 申請・報告を重複のない比例的な手続にしてください
設備整備計画では、営農者との共同申請、設計図、収量見込み、5年間の作付・農作業・収支計画、保険、撤去費用、毎年の報告などが求められます。適切な営農と安全を確認する趣旨は理解しますが、農地転用、地域計画、FIT・FIP認定、系統連系、自治体協議で提出済みの情報を繰り返し求めると、小規模な農業者や地域事業者に過大な負担が生じます。
(1)既提出資料の再利用と行政機関間の確認を可能にし、同じ資料の重複提出を求めないでください。
(2)設備規模、農地面積、営農内容、過去の遵守実績に応じて簡易様式を設け、リスクに応じた手続としてください。
(3)営農者を共同申請者とする場合は、資金調達、系統連系、保安、第三者損害、撤去に関する責任範囲を明確にしてください。
(4)営農者の交代、販売先の変更、軽微な設備変更などは簡易な変更手続で扱い、営業上の機密を適切に保護してください。毎年の報告はデジタル化し、変更のない項目を再入力させない仕組みにしてください。
2.6 地域にもたらす公益的価値を支援対象として評価してください
基本方針案は、蓄電池、地域マイクログリッド、非常用電源、農業施設への電力供給、営農コストの削減、荒廃農地の再生などを望ましい取組として例示しています。この方向を理念にとどめず、地域主体の案件を実際に支える政策へつなげる必要があります。
(1)農業者・地域主体の所有や参画、地域PPA、自家消費、農業施設への電力供給、災害時電源、荒廃農地の再生、透明な利益還元など、測定できる公益的成果をもつ案件を優先支援してください。
(2)新規就農者や地域主体の案件に対し、長期融資、信用保証、初期の営農確立支援、モニタリング費用への支援を整えてください。
(3)営農型太陽光発電を市町村の目標から一律に除外せず、営農継続面積、農業所得、地域内電力利用、荒廃農地再生、災害時供給などを含む専用指標を設定できるようにしてください。
2.7 入口の一律規制より、実績の確認と問題案件への重点対応を重視してください
毎年の実施状況報告、改善指導、認定取消し、撤去費用、第三者損害への備えは、適切な事業規律を確保するうえで重要です。入口で良い案件と問題案件を過度に予測するより、実際の営農実績を継続的に確認する仕組みへ重心を移すべきです。
(1)収量、品質、品目、設備設計、発電量、農作業時間、農業所得、地域への利益などを、全国共通のデータベースへ蓄積してください。
(2)気象災害、病害虫、作付転換など、単収低下の理由を記載できる仕組みを設け、単年度の数値だけで機械的に判断しないでください。
(3)適切な実績を継続する案件は、報告、更新、現地確認を簡素化し、営農不振、虚偽報告、未報告などのリスクが高い案件へ行政資源を重点的に配分してください。
3.結論
営農型太陽光発電は、農業の継続、農業者の所得向上、地域のエネルギー自立、災害への備え、荒廃農地の再生をつなぐ可能性をもつ取組です。不適切な案件を厳格に是正することと、地域主体の適切な案件を育てることは両立できます。
全国ご当地エネルギー協会は、現行案をそのまま制度化するのではなく、次の修正を求めます。
(1)遮光率30%未満を絶対的な足切りにせず、30%以上を品目・気候・営農実績から評価できる代替ルートを設けること。
(2)年間50万円、品目、販路、収穫開始時期を一律の排除基準とせず、新規就農者や多年生作物に代替証明と営農確立期間を認めること。
(3)最低地上高3m・通路幅4mを、実際の農機、栽培方法、安全、作業動線に基づく性能基準へ改めること。
(4)基本計画の未策定によって新規案件が停止しない移行措置と、市町村への人的・財政的支援を整えること。
(5)申請・報告を重複のない比例的な手続とし、共同申請者の責任、営業秘密、軽微変更、デジタル提出を明確にすること。
(6)地域主体、地産地消、防災、荒廃農地再生、利益還元などの公益的価値を支援し、実績のある案件を簡素化すること。
(7)全国データベースとリスクに応じた監督を組み合わせ、制度を定期的に検証・改定すること。
参考資料
農林水産省. (2026a). 農地法施行規則及び農山漁村再生可能エネルギー法施行規則の一部改正案(案件番号550004381). https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?Mode=0&id=550004381
農林水産省. (2026b). 設備整備計画の認定等に関する省令の一部改正案(案件番号550004382). https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?Mode=0&id=550004382
農林水産省. (2026c). 農山漁村再生可能エネルギー法に基づく基本方針の改正案(案件番号550004383). https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?Mode=0&id=550004383
農林水産省. (2026d). 営農型太陽光発電の取組事例. https://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/einou.html
パブリックコメント全文(PDF)
全国ご当地エネルギー協会では、今回の3件の意見募集に対するパブリックコメントをそれぞれ取りまとめました。各意見書の全文は、以下のPDFからご覧いただけます。
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案件番号550004381
農地法施行規則及び農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律施行規則の一部を改正する省令案
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案件番号550004382
農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律に基づく設備整備計画の認定等に関する省令の一部を改正する省令案
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案件番号550004383
農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進による農山漁村の活性化に関する基本的な方針を改正する件の案
