本記事では、2022年12月13日(火)におこなわれたシンポジウム『今こそ「地域版GX」の時 ~ 地域からのエネルギー移行戦略を目指して』についてレポートします。

開会挨拶

まず、当協会名誉会長の佐藤彌右衛門さん(会津エナジー株式会社 代表取締役)による開会挨拶からはじまりました。「目先のことにとらわれず、長期的な視点で迅速に再生可能エネルギーを促進していくべき」という激励の言葉でシンポジウムが幕を開けました。

全国ご当地エネルギー協会名誉会長 佐藤彌右衛門さん(会津エナジー株式会社 代表取締役)

基調講演

カタストロフからの地域再生 - 生存のためのプランBが必要だ -

次に、金子勝さん(立教大学大学院特任教授)による基調講演がおこなわれました。

金子勝さん(立教大学大学院 特任教授)

冒頭、日本はカタストロフに向かって進んでおり、その時に備えたプランBを考えなければならないと金子さんは述べます。カタストロフとは、一般的には「崩壊」等の意味を持ちます。一方、数学的には「局所的な変曲点」という意味を持ちます。

日本の財政金融政策が麻痺状態であることや産業の衰退などを例に、今の日本の状況は戦争末期のようだとし、突然大きな変化(=カタストロフ)が起きて新たな枠組みが生まれていく前段階にあることが指摘されました。こうした突然の大きな変化に対するプランBとして、エネルギーの転換の必要性が強調されます。

現在は50年周期で訪れる大転換の時代であるため、エネルギー転換をはじめとする先端産業に遅れをとらないことが大事であると金子さんは述べます。

カタストロフを脱するためのプランBとして、金融政策の柔軟性の漸進的な回復や超過利潤課税など国際常識をふまえた物価対策、エネルギーと食料の自給による貿易赤字の縮小、地域分散型社会の構築、科学技術政策の再建などが提案されます。これらは、イチからやり直さなければならない政策転換であり、北欧型のイノベーティブ福祉国家を見習うことや対外ショックに強い地方循環型経済を作ること、地域分散ネットワーク型経済への転換、人材育成なども必要になります。

最後に、フラットにお互いがネットワークで結びつくような社会の構築、社会ビジョンを変えていくことが大事であり、いろいろな地域の実例を入れながら、全国ご当地エネルギー協会には日本の新しい社会と歴史をつくっていってほしいとのメッセージをいただきました。

パネルディスカッション

次に、パネル討論『今こそ「地域版GX」の時 − 地域からのエネルギー移行戦略を目指して』がおこなわれました。飯田哲也さん(環境エネルギー政策研究所 所長/全国ご当地エネルギー協会 理事)による進行で、地域からのGX(グリーントランスフォーメーション)の必要性について議論が進められました。

自民党の中で再エネを推進する秋本真利さん(衆議院議員)と立憲民主党のエネルギープロジェクトチームに所属する山崎誠さん(衆議院議員)からの挨拶があったのち、大野輝之さん(自然エネルギー財団 常務理事)さんから、地域版GXを俯瞰する立場から世界全体で自然エネルギーの導入拡大が進む状況と取り残される日本の状況、そして、これから日本で自然エネルギーを拡大していくために必要なことについてお話いただきました。

次に、小峯充史さん(エコロミ 代表取締役)から、エコロミが最近取り組んでいるプロジェクトについてお話いただきました。さまざまな地域で補助金を活用しながら新しい事業の立ち上げに取り組んでおり、地域マイクログリッド事業や離島再エネ主力化事業の事例についてお話いただきました。

近藤恵さん(ソーラーシェアリング推進連盟 共同代表)は、最新の架台や施工方式、垂直型の登場など進化を続けるソーラーシェアリングの事例を示しながら、農家が食料とエネルギーというインフラを支え社会的需要を満たすことが重要であると指摘しました。

次に、藤川まゆみさん(上田市民エネルギー 理事長)から、地域で協働する再エネというテーマでお話いただきました。市民出資の「相乗りくん」太陽光発電所や、県の補助金を活用して地域の銀行から融資を受けた地域協働型発電所、新たに竣工した野辺山営農ソーラーの事例を挙げ、地域の中でのネットワークの重要性が示されました。

最後に、豊岡和美さん(徳島地域エネルギー 事務局長)から、木質バイオマス利用による地域循環経済というテーマでお話いただきました。地域内でお金が回ることの重要性や、日本の森林のポテンシャルを生かして再エネを新しい産業の柱にすることが推奨されました。

コメント

しずおか未来エネルギー 服部乃利子さん 脱炭素先行地域の風が今吹いていて、静岡市も採択されました。静岡市は、何をどうするかの計画がしっかりしていて、仕組みづくりをしています。大きい企業、小さい企業、自治体がフラットな場で事例を出しながら静岡らしさを広めていきたいと思います。事例を見せることが一番の普及啓発だと思います。

市民エネルギー山口 中原みどりさん 山口市も脱炭素先行地域。市民の力が入っていないのが残念だけど、行政や市民の方と共有し、自分ができることや急がなければいけないことを広めていきたいと思います。

会津電力 磯部英世さん 脱炭素の重点地域にこれからなりたいと思います。再エネの普及には地域特性を生かさないといけないと思います。例えば、森林や小水力などの地域資源を使うなどです。再エネ普及のためには自治体との関係性を見直さなければなりません。そうすることで、市民の理解が得られます。自治体との関係を良くしながら自治体とともに普及していくということを考えています。

豊岡さん 再エネしか過疎化・高齢化などの地域課題を変えることができないと思います。食料、農業、企業もみんな一緒にやれます。応援してくだされば、地域を再生することができるので、お力ください。

藤川さん エネルギーも脱炭素も企業だけ・市民だけではできません。いろいろな人が関わることができるし、かかわらなきゃいけない。今は「地域課題を解決するためにエネルギーが役に立つよ」と話すと、共感の輪が広がります。上田では、まちづくりの話からはじめています。みんなの関心は高まっています。いろいろな人が一同に会して一緒に地域と脱炭素について考えていく、これで、日本を変えていきましょう、みんなで繋がっていきましょう。

近藤さん 政治と行政には、多年度予算をお願いしたい。地域合意は時間かかるので見守ってもらえるような予算が良いです。大企業がソーラーシェアリングに注目していますが、小さい企業は予算がつかないので、制度的にどうにかできないか考えてほしいです。

小峯さん 再エネが目的となった導入というより、地域の課題解決と結びついた導入を進めていくことが大事です。地域課題を話し合うことからはじめていきましょう。

大野さん 良い事例の情報発信が大事だと思いました。再エネの推進力となる取組みをつなげるネットワークづくりが必要ですね。

山崎さん 再エネ分野は以前より進化しています。技術的・ビジネス的にも確かなものになっているなと感じます。経済的にも成り立たないことを国がやっているが、地域エネルギーは地に足ついています。地域の課題に結びつくのが印象的でした。今後も事例を聞きたいと思います。予算の使い方については秋元さんにお願いしたいです。電気代の上昇とともに再エネも一緒に高くなっています。勉強して国会でも正したいと思います。

阿部知子さん(衆議院議員) 石炭や原発を使ってない再エネまでが高くなるのか、と思います。日本だけのことなのかな、と思います。再エネの普及に取り組めるよう頑張ります。

秋本さん 勉強になりました。地域の取り組みを持ち帰りたいと思います。分散型は、推進力も分散してしまうと弱まってしまうのかもしれません。地元の議員に働きかけることが大事です。議論の中身も変わるのではないでしょうか。大規模集中電源推進している人がメディアに出て発言しています。これに反駁する分散型エネルギーのツールが必要なのではないでしょうか。いろいろなところに発信してください。お力添えお願いします。

閉会挨拶

最後に、全国ご当地エネルギー協会共同代表理事の鈴木亨(北海道グリーンファンド 理事長)から、エネルギーと時代の大転換という流れの中で、改めてご当地エネルギーが1軒の屋根に載せる太陽光発電の意味合いを考えながら活動していかなければならないとのコメントでシンポジウムを終了しました。

当日の動画は下記のイベントページからご視聴いただけます。

今こそ「地域版GX」の時 (12/13 シンポジウム)