全国ご当地エネルギー協会リレーエッセイ4
しずおか未来エネルギー株式会社 代表取締役社長 服部乃利子氏
私たちは、太陽光発電所を作っています。でも普通の発電所ではありません。市民・企業・NPO・行政・金融機関などそれぞれが役割を担い、「地域に住むみんなで地域のためのエネルギーを創る」という理念に賛同してくださった皆さんにより設置することができた市民発電所です。
この地域プロジェクト事業は、各プレーヤーに沢山のお願いをしました。発電所に関するハードや技術支援、設置場所確保のための支援、地域の皆さんとつながる支援、無担保・無保証・低金利での融資支援など。そして、そこに大きな資金を必要とせずに市民の皆さんが参加できる仕組みとして、1口5万円・5年間で償還という全国初のマイクロファンドを取入れました。
設置場所も市民の皆さんから出資していただくのですから、身近な場所で災害時には非常電源として活用ができ、かつ、出資しても良いなと思えるような場所にこだわり、市のシンボル的な場所を選びました。
何もないところから始めたプロジェクトですので、とにかく課題が山積み。今では笑い話になりましたが、計画途中で何度もメンバー間で険悪な雰囲気になったりして、事業中止の危機もあった(?)ほどでした。
でも、地域で使うエネルギーを市民が自ら作る側に参加し、改めて電気やエネルギーの使い方を考えてもらうこと。地域に市民発電所が設置されて嬉しい、良かったと思っていただけるようなプロジェクトを展開すること、の想いを共有しながらがむしゃらに取組んできました。関わった全員が面白くてやりがいのある事業だったからここまで走ってこれたのだと思います。
先月、このプロジェクト5か所目最後の発電所が完成し、市民ファンド第1回目のお返しも予定額を上回ることが確定。まずは、少しホッと一息です。
今年の2月。私たちが太陽光発電を設置した静岡市立日本平動物園で、動物と再生可能エネルギーとの関わりを考える環境教育プログラムを実施しました。ひなたぼっこであったかいのは?洗濯物が乾くのは?シャボン玉が飛んでいくのは・・・なぜでしょう?どんな力があるからかな?の問いかけに、「おひさま」「太陽」「かぜー」と、目をキラキラさせて一生懸命答えてくれる子供たちがいました。
私たちは、この子供たちに健やかな地球環境を引き継ぐ責任があります。しずおか未来エネルギーのロゴ・スマイル(S.mi.l.e)に込めたのも、この未来に続く子供たちに、不安ではなく笑顔をつなげていきたいという想いでした。発電所が完成したこれから後に何を発信していくのかが大事だと思っています。
私たちの取組みは、まだ始まったばかり。なぜ、何のためにこの事業に取組んでいるのか、という原点と笑顔を忘れずに、大好きな故郷、静岡で頑張っていきます。
『新エネルギー新聞』2014年8月11日掲載