静岡や小田原などで立ち上がった「ご当地電力」などを参考に、自分も地域のエネルギー事業に取り組みたいという人が増えている。しかし、一般の人にとって発電事業は身近ではなく、実際に始めようとすると敷居は高い。そんなリクエストに応えるように、地域のためになる自然エネルギー活用法を総合的に学ぶことのできるセミナーが、環境エネルギー政策研究所(ISEP)の主催で開講された。(取材・記事:高橋真樹)

ISEPエネルギーアカデミー第1期人材育成プログラム

「ISEPエネルギーアカデミー 人材育成プログラム」と題して5月から実施されてきた連続セミナーは、8月3日に神奈川県藤沢市のエココミュニティモール「エコモ」にて第1期生の最終発表会を迎えた。この日発表したのは、北は北海道から南は大分を拠点にしている12名と、ビデオ参加の1名。月に二度、東京まで通い続けた熱心な受講生たちが、熱い思いと将来のビジョンを語った。

広島から参加した大西康史さん(写真中央左)
広島から参加した大西康史さん(写真中央左)

広島から参加した大西康史さん(34)は、3.11の震災を境に環境NGOを立ち上げ、その職員として活動している。事業の一環として、地元の生協や新聞社と連携し、まずは広島県世羅町にある町内自治センターに10キロワットの太陽光発電設備を設置する予定だ。その後は来年度以降をメドに、公共施設などの屋根に設置することができないか模索していく。大西さんは言う。

”世羅町は地球温暖化対策の取り組みを行ってきた環境政策に熱心な町です。一方で高齢化なども深刻で、新しい町づくりを考える必要がある。エネルギーを通して町の人たちが自分たちの町のことを考えるきっかけを作れればよいと思っています。”

兵庫県宝塚市で太陽光発電事業を営む西田光彦さん
兵庫県宝塚市で太陽光発電事業を営む西田光彦さん

兵庫県宝塚市で太陽光発電事業を営む西田光彦さん(52)は、地域のための発電所を作るために、本業とは別に「NPO法人自然エネルギーをすすめる宝塚の会」のメンバーとしても活動している。

”当初はとにかく発電設備を増やせばいいと思っていました。でもいろいろ学んで考え方が変わりました。大切なのは、地域に還元できる仕組み作り。それが地域の産業を育てていくことにつながります。”

東京在住の田中ちづるさん
東京在住の田中ちづるさん

東京在住の田中ちづるさん(32)も、当初はコンサルタントの仕事で関わっている自治体に市民発電所を作れないかと考えていたが、セミナーを受講して意識が変わったという。

”私自身が主体的にできることって何だろうって考えました。自分は都市部に近いベッドタウンの出身なので、広い土地もないし、地域に発電所を作りたいというほどの強い思いはありません。でも、私の周りには関心のある人がたくさんいて、ネットワークがあるなって思いました。逆に地方で事業をやろうとしている人たちが困っているのは、人が少なくて、仲間作りが大変だということ。だったら自分には、都会と地方をつなぐことができるんじゃないかと思いました。”

田中さんは、まずは「何からやっていいかわからない」という人を誘って、地方に視察に行く交流ツアーの実施や、地方のプロジェクトを応援する企画などを検討したいと語る。

セミナーを通して、さまざまな気づきやきっかけを得た受講生たちの多くは、今後はそれぞれの地域で市民参加型の自然エネルギー事業をめざしていく。

ISEPエネルギーアカデミー第2期人材育成プログラムの受講者募集は、ISEPホームページにて募集中(募集受付期間:2013年9月25日(水)〜10月2日(水))。

(取材・記事:高橋真樹)

全国ご当地電力レポート