情報公開をかかげて、長野の再エネ拡大をめざす – 長野県「おひさまBUN・SUNメガソーラープロジェクト」

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SUWACO laboを上空から見た様子(写真:岡谷酸素)

SUWACO Laboを上空から見た様子(写真:岡谷酸素)

■ 概要

事業体:長野県、岡谷酸素株式会社
設備設置場所:長野県諏訪市(諏訪湖流域下水道豊田終末処理場)
カテゴリー:事業開始済み

■ 活動のきっかけ

長野県は、太陽光、水力、森林など、豊富なエネルギー資源に恵まれています。一方で石油やガス、電気などのエネルギー購入費は家計を圧迫し、県内の資金が光熱費として流出を続けています。そのため、自然エネルギーを積極的に活用して、長野の経済と環境を活性化させようという方針を掲げてきました。
その流れを受け、2年がかりで実現したのが、屋根貸し太陽光発電事業の第1号「おひさまBUN・SUNメガソーラープロジェクト」です。これは県が所有する施設の屋根を提供し、地元企業が事業主となるもので、同じ長野県の飯田市などで取り組まれてきた官民連携の自然エネルギー普及策となります。コミュニティパワー・イニシアチブのページでも紹介してきたように、最近ではこうした取り組みは他の地域でも徐々に広がってきていますが、長野県としては今回が初めての実施となりました。
諏訪湖のほとりにある長野県の下水道処理施設「クリーンレイク諏訪(諏訪湖流域下水道豊田終末処理場)」の施設の屋根を、太陽光発電のために貸し出す事業の公募をはじめたのは2012年10月。名乗りを挙げた企業の中から、諏訪湖に隣接する岡谷市に拠点を置く、総合商社「岡谷酸素株式会社」の提案が採択されました。岡谷酸素は、かつてから諏訪湖の浄化や環境問題に熱心に取り組んできたため、このプロジェクトに対する強いこだわりがありました。
約1年にわたった準備期間を経て、出力約1メガワット(一般家庭約300世帯分)の「岡谷酸素太陽光発電所SUWACO Labo(スワコ・ラボ)」が完成、2013年11月から稼働がはじまりました。ネーミングの由来は、諏訪湖のほとりにある太陽光発電所の研究所(ラボラトリー)という意味と、諏訪の行政、企業、住人との協働事業(コラボ)の意味があるとのことです。

■ 特徴 – ポイントは情報公開と、地域経済への貢献度

今回の取り組みは、単に県が屋根を貸して事業者が設置という事業ではありません。大きな特徴は2つ。1つ目は、県が公募するにあたって、長野県の他地域のモデルになるよう事業に関するデータやノウハウを公開することを条件にしたことです。
県としては屋根貸し事業のノウハウがないため、まずこの最初のプロジェクトを足がかりにしようと考えました。ここで得られる知見を共有するため、図面や申請書などのあらゆる資料から、発電量、そして事業の収支にいたるまで、原則すべてを公開するという透明性の高い事業になりました。ここまで公開性の高い事業は、全国のこれまでの取り組みでも例がありません。ちなみに、日々の発電量は岡谷酸素ホームページのSUWACO Laboサイトから確認することが可能です。
このデータを共有する役割を担うのは、自然エネルギー信州ネットです。自然エネルギー信州ネットは、長野各地で自然エネルギーに取り組む市民、企業、大学、行政などをゆるやかにつなげるネットワーク組織として、2011年7月に誕生しました。岡谷酸素からの提案により、売電収入の配当後の30%が、自然エネルギー信州ネットに入ることになり、(予定では、20年間で3,800万円)その収入とデータを活かして、県内で市民参加の新しいビジネスモデルをつくる働きかけをしていきます。

関係資料はすべて公開されている(写真:高橋真樹)

関係資料はすべて公開されている(写真:高橋真樹)

2つ目の特徴は、地域経済への波及効果を意識している点です。県の環境部と岡谷酸素は、検討を重ねて、設置業者や金融機関、パネルの調達先まで、できる限り地元の業者を使うことにしました。それにより、総事業費の8割を県内資本が担うことになりました。
県の環境部温暖化対策課の試算によれば、1メガワットの太陽光設備を設置する場合、地域外の業者が手がけるなら地域への経済効果は20年間でおよそ4億円程度になります。しかし、今回のケースのように県内企業を中心にした場合、直接、間接を含めて地域で流れるお金がおよそ2.5倍の10億円程度になるという数字が出ました。このことは、単に設備を設置すれば良いのではなく、地域の人材、技術、資金を活用する仕組みをつくることによって、より大きな地域経済効果が生まれることを証明しました。
予想される収益は、20年間で約1億円。決して多くの収益が上がる訳ではありませんが、岡谷酸素が積極的に手を上げることができた理由の一つには、固定価格買取制度(FIT)で20年間買取価格が保証されているため、持ち出しのリスクが少ないことが安心材料としてありました。
また岡谷酸素が、単に県の事業に応募したという姿勢ではなく、以前から自然エネルギー信州ネットに積極的に参加するなど、地域に自然エネルギーを広めようとしてきたことも、大きな動機になっています。さらに、この事業が岡谷酸素にとって初めてのメガソーラー事業になり、この経験を次に活かせるという想定もあったとのことでした。

■ 設置設備と今後の展開について

今回の、「おひさまBUN・SUNメガソーラープロジェクト」では、前述した出力約1メガワット(太陽光パネル4,960枚を使用)の「岡谷酸素太陽光発電所SUWACO Labo」の他、諏訪市にある小川区公会堂の屋根にも6.0キロワットの太陽光パネルを設置しています。SUWACO Laboでは賃料として、岡谷酸素から長野県に毎年490万円が支払われる予定(20年間で約1億円)です。一方、小川区公会堂では賃料は無償ながら、非常時の場合は公会堂が電気を使え、さらにバッテリーの保守点検を岡谷酸素が無償で対応するという条件になっています。

設置にあたって苦労した点としては、小川区公会堂の場合、利用しているグループが複数いたため、全員の合意をとることが大変だったことです。また下水道処理施設では、古い施設を何度かにわたって継ぎ足してつくられていたので、全体を把握してどのような形で設置するかを決めるのに苦労しました。いずれも県として初の取り組みだけあって、決定プロセスも簡単ではありませんでした。
これからの課題としては、県の屋根貸し事業の第2弾の次の候補地がまだ決まっていないことや、公開されたデータの共有方法をどのように具体化していくかが未定ということ、などが挙げられます。しかし、地方自治体による屋根貸し事業の先駆的な事例として、全国のモデルになっていく可能性があります。また、県が主体になった動きに頼らずとも、この動きに刺激を受けた他の市町村が取り組みを始める例も出てくるでしょう。この画期的な事業がどこまで反響を広げるのか、期待したいと思います。

■ ステークホルダー

  • 岡谷酸素株式会社/事業主体を担う
  • 長野県/事業のコーディネート
  • 自然エネルギー信州ネット/得られた知見を分析して、全県に共有、拡大
  • 地域金融機関(八十二銀行、諏訪信用金庫)/プロジェクトへの融資

■ キーパーソンからのメッセージ

嶋田克彦さん(岡谷酸素企画室室長)

嶋田克彦さん(岡谷酸素企画室室長)

”岡谷酸素は、以前から諏訪湖の浄化に関わるなど、会社としてこの地域への思い入れは強くもってきました。今回もその流れから、ぜひ関わりたいということで応募しました。長野では前例のない県との共同事業、しかも20年間維持管理を続ける必要があり、責任も感じています。当初は計算通りに行くかどうか不安もありましたが、発電開始からこれまで(2013年12月時点)、予想を上回る発電をしてくれているので、ひと安心というところです。今回の取り組みを活かして、地域に自然エネルギーのメリットを還元していきたいし、県内の各市町村でも自然エネルギーを増やすところが出てきていただければと考えています。”

■ お問い合わせ

岡谷酸素株式会社 企画室 担当:嶋田
〒399-004
長野県松本市市場6-20
Tel: 0263−27−8800
Fax: 0263−27−8805
Email: shimada-k@okayasanso.co.jp

■ 関連リンク

(取材・記事:高橋真樹)

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