小水力を利用した山間部の地域づくり – 岐阜県郡上市白鳥町石徹白地区

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雪に囲まれた石徹白は、水力が豊富(写真:高橋真樹)

雪に囲まれた石徹白は、水力が豊富(写真:高橋真樹)

■ 概要

事業主体:NPO法人地域再生機構NPO法人やすらぎの里いとしろ
本拠地:岐阜県郡上市白鳥町石徹白(いとしろ)
ステータス:事業開始済み

■ 活動のきっかけと概要

岐阜県郡上市白鳥町にある石徹白(いとしろ)地区は、福井県との県境にある中山間地です。豪雪地帯として知られ、近くにはスキー場もあります。筆者がここを初めて訪れたのは2013年の3月末でしたが、まだ雪が1メートル近くも積もった状態でした。地区の人口は270人、世帯数100戸で、他の過疎地域と同様に高齢化が進んでいます。近くのスーパーまで車で30分という、利便性という意味では決して良くない地域です。
しかし、ここで取り組まれている小水力発電の取り組みが、いま全国的に注目を集めています。名峰白山の懐にある石徹白地区は、豪雪地帯だけあって水量が豊富です。昭和30年まで、この地域では、小水力発電によって集落の電気がまかなわれていました。近年、地区内を流れる農業用水路を利用して、「NPO法人地域再生機構」と「NPO法人やすらぎの里いとしろ」が事業主体となった小水力発電が設置されています。
設置は2008年1月から実験的に導入が進み、2013年11月現在は、2機のらせん形水車と、1機の上掛け水車が稼働中です。現在稼働しているものの規模はマイクロ水力発電機の中でも出力の小さなものですが、マイクロ水力発電の導入が地域の活性化の呼び水となっており、今では地域のシンボル的な存在になっています。また、今後は規模の大きな小水力発電機を導入して、地域の電力全体を自給することをめざしています。

■ 特徴

すぐ側の食品加工場に電力を供給する上掛け式水車(写真:高橋真樹)

すぐ側の食品加工場に電力を供給する上掛け式水車(写真:高橋真樹)

石徹白の取り組みには、ユニークな点が2つあります。ひとつはマイクロ水力発電の導入、管理、運営を、地域住民が担っているという点です。「地域でできることは、地域でやる」という考え方で行っていますので、電気制御回路の製作や土木工事、日常メンテナンスなどを、試行錯誤しながら行っています。自分たちが苦労しながら導入した設備ですので、自分たちで修繕することができますし、自分たち自身でエネルギーを生み出しているという実感を持っています。
そしてもうひとつ、こちらの方が重要なのですが、単に小水力で発電していますというだけでなく、この動きが地域の活性化につながっているという点です。小水力発電をきっかけに、休眠していた地域の農産物加工施設が稼働し始めました。そこでは地域の特産品のとうもろこしを加工することになりました。そこで新たな特産品を生み出そうという試みがはじまっています。また、水車が注目された効果で、人口270人の村に、年間500人以上の多くの見学者が訪れるようになりました。そこで、地元の女性たちが中心になって、地元の食材を使ったカフェを運営するようになりました。
過疎が進んでいる石徹白地区では、地域の重要な課題は、水車の導入ではなく、地域をどうしたら存続できるかという点にあります。小水力発電をきっかけに地域の人が主体になったさまざまなプロジェクトが動き始めたことで、少しづつ活気が戻りつつあります。子連れの若い居住者も4世帯増えたという効果も出ています。そして今では、小水力発電が地域づくりのシンボルになってきています。

■ 設置設備について(2013年12月現在)

らせん型水車(写真:高橋真樹)

らせん型水車(写真:高橋真樹)

実験的な設備の導入は2008年1月から開始。実用機の導入としては、2008年11月に200ワットのらせん型水車1号機が設置されました。2009年には、800ワットのらせん型水車2号機を導入。ここで生まれた電力は、地元NPO「やすらぎの里いとしろ」の事務所の照明や外灯などに利用されています。ちなみに、らせん型水車は流れ込む水量が多く、落差が50cm程度の場所に適している水車です。ゴミが詰まりにくいため、メンテナンスに手がかからないというメリットがあります。

上掛け式水車は、豪雪地帯でも1年間休みなく稼働している(写真:高橋真樹)

上掛け式水車は、豪雪地帯でも1年間休みなく稼働している(写真:高橋真樹)

2010年には、科学技術振興機構(JST)の研究開発プロジェクトにより、出力2.2キロワットの上掛け水車が設置されました。落差3メートルの上掛け水車は地元の農産物加工所のそばに設置され、施設の電気の一部をまかなっています。この加工所は、稼働率が低く休止状態が続いていましたが、小水力発電の導入がきっかけとなり、石徹白名産のとうもろこしを使った加工品づくりがスタートしました。石徹白は豪雪地帯ですが、水車は雪が降っても停止することなく、常に稼働を続けています。
ここで取り組んでいる水力発電はいずれも、水利権の取得が容易な普通河川から取水する農業用水を活用しています。水力発電を実施する際には水利権が課題となるケースが多かったのですが、河川法の改正により、今後、水利権取得が容易になる地点が増えると考えられます。その際には、石徹白地区のような動きが、全国の活動の参考になるのではないかと思います。

■ 今後の展望

小水力発電所建設予定地。この傾斜を利用して地域の電力をまかなうことをめざす(写真:高橋真樹)

小水力発電所建設予定地。この傾斜を利用して地域の電力をまかなうことをめざす(写真:高橋真樹)

2015年度の実現をめざして動いているのは、石徹白の全世帯の電力をまかなえる小水力発電所の事業化です。これも、農業用水路を利用しますが、規模が大きいので、設備投資には億単位の資金が必要となります。自治体などと協力しながら、地域の資金も入れて、地域の人たちが主体になれるようなシステムを作ろうと検討中です。資金返済後は、売電益を地域振興のための事業の原資にする予定です。
現在のエネルギーシステムでは、発電した電気をいったん売電して、電力そのものは電力会社から購入しなければいけません。そのためかつてのように地域で発電した電力を地域で消費するというスタイルではありませんが、地域の人たちがお金を出し合い、運営するこの水力発電の取り組みは、地域のポテンシャルを引き出し、自治意識を高めるという意味で重要なものになるはずです。

■ ステークホルダー

  • NPO法人地域再生機構:小水力発電設備の導入、事業全体の計画づくりのコーディネート
  • NPO法人やすらぎの里いとしろ:小水力発電設備の維持管理、見学対応
  • 石徹白地区地域づくり協議会:地域づくり活動の実施

■ キーパーソンからのメッセージ

平野彰秀さん

平野彰秀さん
(NPO法人地域再生機構副理事長/石徹白地区地域づくり協議会事務局)

”私の出身は岐阜市で、東京でコンサルタントとして働いていました。しかし、これからの時代、希望は都会ではなくこうした地方にあると考え、石徹白に移住することにしました。
ここ石徹白もそうですが、昭和初期までこうした中山間地では、全国で小水力発電が行われていました。その頃は、自分たちの手で暮らしを作り出すことは当たり前だったのです。そう考えると、今は大きなシステムに頼りきってしまっているように感じます。そのことは、エネルギーの話に限りません。地域の人たちは、潜在的に自治の力を持っています。地域の人たちが主体になったこうした活動をお手伝いしながら、実現していきたいと考えています。”

■ お問い合わせ・視察のお申し込み先

NPO法人やすらぎの里いとしろ
kengaku(アットマーク)itoshiro.net
※アットマークを、@に直してお送り下さい。
電話:080-5151-8895 (理事長 久保田政則)

「石徹白の小水力発電の視察について」
⇒ http://itoshiro.blog98.fc2.com/blog-entry-105.html

■ 関連リンク

(取材・記事:高橋真樹)

全国ご当地電力レポート