地域の人が参加しやすい仕組みづくりを実現 – しずおか未来エネルギー

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日本平動物園でのスタートップイベント(写真:しずおか未来エネルギー)

日本平動物園でのスタートップイベント(写真:しずおか未来エネルギー)

■ 概要

事業社名:しずおか未来エネルギー株式会社
本拠地:静岡県静岡市
ステータス:実績あり

■ 設立の経緯と事業概要

静岡市を拠点に活動するしずおか未来エネルギーは、静岡県内で温暖化対策に取り組んできた「NPO法人アースライフネットワーク」と地元企業である「鈴与商事株式会社」の出資により、2012年12月12日に設立された事業会社です。
「地域に住まう“みんな”で創る、地域のための再生可能エネルギー」をコンセプトに、2013年8月現在は太陽光発電事業を中心とした活動を行っています。
設立の経緯としては、アースライフネットワークと静岡市の共同提案書が環境省「平成23年度地域主導型再生可能エネルギー事業化検討業務」に採択されたことから、既設の「ストップ温暖化!清流の都しずおか創造推進協議会」のもとに事務局が設置され、そこで作られた事業計画を実行する法人組織として設立されたという流れがあります。
最終的には、市の公共施設でしずおか未来エネルギーが優先的かつ低額(原則無料)で利用できるように、静岡市とアースライフネットワーク、そしてしずおか未来エネルギーの3者で協定書を結びました。
しずおか未来エネルギーは、長年、アースライフネットワークの活動を通じてすでにできていたネットワークや信頼関係を活かして、地域エネルギー事業を進めています。

■ 特徴

しずおか未来エネルギーの取り組みで画期的だったことのひとつは、全国で初めて一口5万円で5年で償還という、誰もが参加しやすい市民出資の仕組みに徹底してこだわったことです。これまでの市民出資では、金額は10万円から50万円、返済までの期間は10年から15年というものが多かったので、このプランは多くの関係者を驚かせました。
第1弾の市民出資を少額で短期間のものにしようとした理由は、金額が大きかったり期間が長いと、参加しにくかったり、参加したとしても関心が薄れてしまうというものでした。この誰もが参加しやすい市民出資の仕組みづくりを徹底したことで、400口の募集を開始して10日間で、約半分の200口が埋まるという反響がありました。
一般の人を巻き込んで、関心を持ってもらおうというコンセプトは、設備を設置した場所にも表われています。最初の設備は、サッカースタジアムの駐車場や動物園など、多くの人が集まる場所に設置されました。誰も訪れない山の中に大きな発電設備を作るのではなく、小さくてもモデルを示していくという狙いは、今のところうまくいっているように思います。
この事業の資金の約半分にあたる4,000万円は地元の金融機関である静清信用金庫から融資を受けています。この融資は、無担保、無保証という破格の条件で実施されました。交渉にあたった服部乃利子社長には、「今後、地域でエネルギー事業をやろうという人が、無限責任で担保や個人保証を出さないと事業を進められないという流れにしたくなかった」というこだわりがありました。とはいえ最初から金額が大きければ、その交渉も難航したはずです。小規模な設備にしたからこそ、こうした提案を受け入れてくれたのではないかということでした。
スケールメリットが活かせないことで、事業の採算性から言えばかなり厳しい挑戦にはなりましたが、それでも運営していける最低限のコストは確保できています。それよりも、地域にとってこの事業の意味を議論してこうした参加しやすい仕組みをつくったことの意義は大きいでしょう。

■ 設置設備について(2013年8月現在)

日本平動物園に設置された太陽光発電(写真:しずおか未来エネルギー)

日本平動物園に設置された太陽光発電(写真:しずおか未来エネルギー)

清水エスパルスの本拠地IAIスタジアムに設置された太陽光発電

清水エスパルスの本拠地IAIスタジアムに設置された太陽光発電(写真:ISEP)

静岡市番町市民活動センターに設置された太陽光発電(写真:しずおか未来エネルギー)

静岡市番町市民活動センターに設置された太陽光発電(写真:しずおか未来エネルギー)

しずおか未来エネルギーの第1弾事業として、静岡市内の動物園(静岡市立日本平動物園)、サッカースタジアム(Jリーグ清水エスパルスの本拠地IAIスタジアム日本平)、市民活動センター(静岡市番町市民活動センター)の3か所に合計約150kWの太陽光発電を設置。2013年6月から発電を開始しています。さらに2013年度中に2カ所に設置予定で、5カ所の設備を合計すると約200kwの設備で、FIT(固定価格買取制度)を利用しての売電事業となります。
総事業規模8,000万円の内訳は、上で触れているように地域の金融機関である静清信用金庫が4,000万円を融資、マイクロ投資を手がけるミュージックセキュリティーズ社とのパートナーシップのもとで、一口5万円の市民出資で2,000万円を集めました。市民出資に参加した人の約60%は、静岡県民です。残りの2,000万円は自己資金となります。
設置施設ではアースライフネットワークによる自然エネルギー普及啓発・環境教育プログラムが実施される予定になっています。

■ 今後の展望

今後は、必ずしも少額の市民出資で太陽光発電を設置するというスタイルだけでなく、地域に自然エネルギー設備を普及するためのさまざまな可能性の検討を進めています。
具体的には、教育機関等との環境教育プログラムの共同実施や清水エスパルスとのコラボイベントの企画・運営を検討しています。また、静岡県内の他市町への水平展開や、小水力・バイオマス等による事業開発も検討していく予定です。

■ ステークホルダー

  • 地域コーディネーター/事業会社出資者:NPO法人アースライフネットワーク(環境省への事業の共同提案、事業計画の策定、ステークホルダーの連絡・調整、事業会社への出資)
  • 太陽光発電設備設置事業者/事業会社出資者:鈴与商事株式会社(太陽光発電設備の設計・調達・施工、事業会社への出資)
  • 自治体:静岡市(環境省への事業の共同提案、協議会を通じたイニシアチブ、事業全般への積極的なサポート、設置場所の提供など)
  • 金融機関:静清信用金庫(プロジェクトへの融資など)
  • ファンド運営:ミュージックセキュリティーズ(市民出資の組成など)

■ プロジェクトのキーパーソンから

服部乃利子さん(しずおか未来エネルギー代表取締役社長)

服部乃利子さん(しずおか未来エネルギー 代表取締役社長)

”私たちが事業を始めたことで、静岡のいろいろな地域の方から、自分のところでもやりたいけれどどうしたらいいかと相談を受けることが増えました。事業を軌道に乗せるまでは専門知識や予想外の困難も多く、簡単には実現できないことばかりです。でも、だからといって諦めず、想いを持ち続けてほしいと思っています。みんなの知恵を集めれば実現できることは必ずあります。私たちも、皆さんのモデルになるようなものを小さなレベルから積み上げていきたいと思っています。
私が消費者団体の活動に関わっていたとき、先輩からこんな言葉を言われました。「あなたがどんなに頑張っても、一人では世の中を変えられない。でも、100人がちょっとずつ動けば世の中は変わる」と。さまざまな活動に関わる中で、一人の100歩より、100人の1歩の方が社会を動かしていくことを実感してきました。地域のエネルギー事業も今まさに変化をつくりだす時を迎えていると思いますし、そのタイミングに自分が立ち会えていることを嬉しく思います。”

■ お問い合わせ

〒420-0851 静岡県静岡市葵区黒金町12-5 丸伸ビル2F
TEL:054-260-4414
FAX:054-254-7052
URL:http://s-miraienergy.com

■ 関連リンク

※ISEP研究員、古屋将太氏によるWEBリポート(SYNODOS)http://synodos.jp/fukkou/4683

(取材・記事:高橋真樹)

全国ご当地電力レポート